気候変化と播種日の早期化が過去27年間の米国トウモロコシ収量に与えた影響

タイトル 気候変化と播種日の早期化が過去27年間の米国トウモロコシ収量に与えた影響
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間
研究担当者 飯泉仁之直
櫻井玄
発行年度 2014
要約 米国・コーンベルトではトウモロコシの播種日が年々、早まる傾向にあります。この播種日の早期化により、過去27年間の降水量減少と気温上昇がトウモロコシ収量に及ぼした悪影響が緩和されていたことが分かりました。
背景・ねらい 将来の気候変化が食料生産に及ぼす影響を予測するうえで、既に観測された気候変化が作物収量に与えた影響を検出し、要因分析を行うことが重要です。米国・コーンベルトを対象に、1980~2006 年の気温、降水量、日射量の変化がトウモロコシ収量に及ぼした影響を、広域作物モデルを用いて、既存研究よりも定量的に評価しました。
成果の内容・特徴 コーンベルトでは 1980~2006 年の間にトウモロコシの播種日が約2週間早まりました。この播種日の早期化は生育期間を延ばして収量を高めることが目的で、種子の低温耐性の向上や高性能な播種機の導入などによるものです。一方、コーンベルトではトウモロコシの生殖生長期間に、10 年間あたり 0.4 ℃の気温上昇と 0.2 mm d-1 の降水量減少、0.5 MJ m-2 d-1 (MJはメガジュール。1日の累計エネルギー)の日射量増加が観測されています(図1)。

 農環研で開発した広域作物収量予測モデル PRYSBI-1.1 を用いて、播種日と気候の両方の変化を考慮して収量を再現した REAL 実験の結果、トウモロコシ収量増加は平均で 10 年間あたり 0.81 t ha-1 と推計されました(図2)。この値は収量統計から得られた増加(1.26 t ha-1 )を過小評価しているものの概ね一致します。なお、REAL 実験を含む全ての実験で、窒素投入量の経年変化を考慮しました。播種日の変化のみを考慮した SOW 実験からは播種日の早期化により、収量は 10 年間に 0.90 t ha-1 まで増加したと見積もられました。一方、気候の変化のみを考慮した CLIMATE 実験からは、播種日を早期化して来なければ、気候変化により 10 年間の収量増加は 0.65 t ha-1 に留まったと見積もられ、播種日の早期化が気候変化の悪影響を緩和していたことが示されました。また、降水量の変化のみを考慮した SOW-P 実験などにより、気候変化のうち、降水量の減少と気温上昇による作物収量への悪影響が日射量増加による好影響を上回っていたことが示されました。

 気候変化の収量影響は既に発生しており、その影響を検出し、主な気候要因を特定することで、より信頼性の高い適応策の開発に結び付けることが期待されます。

 本研究は環境省環境研究総合推進費「気候変動リスク管理に向けた土地・水・生態系の最適利用戦略」による成果です。
図表1 236887-1.jpg
図表2 236887-2.jpg
研究内容 http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result31/result31_22.html
カテゴリ 耐寒性 とうもろこし 播種

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