タイトル | ブタクサハムシは侵入地の環境に急速に適応する |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
田中幸一 村田浩平 |
発行年度 | 2014 |
要約 | 外来昆虫ブタクサハムシは、わが国に侵入後、休眠開始の目安となる日長への反応性が、侵入地の環境に適応する方向に、短期間で変化しました。この結果は、生物のなかには、従来の報告以上に急速に侵入地の環境に適応するものがいることを示しています。 |
背景・ねらい | 外来生物は、侵入地の農作物や在来生物に対して、多大な問題を引き起こしてきました。生物が侵入地に定着するためには、原産地と異なる環境に適応する必要があります。外来生物の分布拡大や被害リスクを予測するためには、新たな環境への適応過程やその機構を明らかにすることが重要です。そこで、近年わが国に侵入し分布を拡大した外来昆虫であるブタクサハムシが、侵入地の環境にどのように適応したかを調べました。 |
成果の内容・特徴 | ブタクサハムシの成虫(図1)は、短日条件で休眠します。茨城県つくば市で1999年および2005~2012年の各年に採集した系統をさまざまな日長で飼育して、休眠率(休眠した個体の割合)を調べました。2005~2012年の各系統では、1999年の系統に比べて、同じ日長における休眠率が低く、臨界日長(50%の個体が休眠する日長)は、2時間程度短くなっていました(図2)。これは、1999年から2005年までの6年以内に光周性(日長に対する反応)が変化し、休眠に入る季節が遅くなったことを意味します。 この変化が侵入地の環境に対する本虫の適応によるものであるか明らかにするために、2009~2014年に全国18地点で採集して、日長13時間におけるそれぞれの休眠率を調べた結果、緯度が高いほど、標高が高いほど、寄主植物がオオブタクサであるよりブタクサである方が、休眠率が高いことがわかりました(図3、表1)。高緯度、高標高の地域ほど寄主植物は早く枯れ、またブタクサはオオブタクサより早く枯れることから、このような光周性の変化は、寄主植物が早く枯れる地域ほど、早く休眠に入ることを意味し、本虫が侵入地の環境に適応していることを示しています。 外来生物が侵入地の環境に適応するのには、比較的長い期間を要するとされていますが、本虫では6年(約20世代)以内というきわめて短い期間で新たな環境に適応したと言えます(図4)。この結果から、昆虫のなかには、侵入地の環境に適応するように生理・生態的特性が急速に変化するものがいることがわかりました。この成果は、侵入害虫の被害リスクや気候変動に伴う昆虫の適応現象を予測する場合に役立てることができます。 本研究の一部はJSPS科研費24580084による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
研究内容 | http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result31/result31_30.html |
カテゴリ | 害虫 |