ドリアン‘モントン’は開花期の低夜温で受精が抑制され着果不良になる

タイトル ドリアン‘モントン’は開花期の低夜温で受精が抑制され着果不良になる
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2007~2010
研究担当者 香西直子
緒方達志
O. Chusri
S. Tongtao
発行年度 2014
要約 ‘モントン’においては、開花期の夜温が15°Cでは著しい落果(花)を生じるが、25°Cでは受粉28日後も約30%の着果率を維持する。夜温が15°Cに低下すると、花粉管は伸長するが、胚珠の発達が阻害され受精しない。‘モントン’では、夜間温度が15°Cでは受精が抑制され落果(花)する。
キーワード 胚珠、解剖学的観察、温度制御
背景・ねらい ドリアンの主要産地であるタイのチャンタブリでは、主な開花期である1月の平均最低気温は20.7°C(過去10年間平均)だが、2014年には5年ぶりに15°C以下の最低気温を記録し、最低気温が17°Cを下回る日は約1週間続いた。ドリアンは開花後に生理落果するが、通常は15~30%が着果する。しかしこの年、タイの主力品種である‘モントン’の商業果樹園では生理落果がとくに著しく、農家は大きな被害を受けた。開花期の低温はドリアンに着果不良をもたらすと経験的に言われているが、植物体が大きい熱帯果樹では環境制御が困難であるため、温度の影響は十分に検証されていない。本研究では、屋外で使用可能な温度制御装置を開発し、タイの主力品種‘モントン’について、開花期の気温、とくに温度が低下する夜から早朝にかけての気温が着果におよぼす影響を明らかにする。さらに胚珠を解剖学的に観察し、着果不良と胚珠発達との関係を解析する。
成果の内容・特徴
  1. ペルチェ素子を利用し開発した温度制御装置は軽量小型で、開花期のドリアンの花房周辺の温度を局部的に制御し、屋外条件で温度制御試験を行うことが可能である(図1)。
  2. 花房全体の夜間(20:00~08:00)温度を受粉後7日間、25°Cに制御すると、受粉28日後でも約30%の着果率を維持する。一方15°Cの場合は、受粉21日後までにすべて落果する(図2)。
  3. いずれの処理区も花粉管は伸長するが、15°C区では受粉7日後が経過しても花粉管を受け入れる前の状態である胚のう完成期(8核期極核融合)の胚珠が14.3%あり、受精したことを示す胚乳核分裂の状態まで発達した胚珠は0%で受精していない(図3A、表1)。一方25°C区では、受粉7日後までに22.7%の胚珠で胚乳核が分裂し始め、受精している(図3B、表1)。胚珠の大きさも15°C区では25°C区に比べて小さい(表1)。
  4. ‘モントン’においては、夜間15°Cでは胚珠での正常な受精が阻害され、着果不良となる。
成果の活用面・留意点
  1. ‘モントン’は需要が高いタイの主力品種だが、着果は低夜温の影響を受けやすいので、地域によっては単植を避けたり、植物成長調整物質の活用により開花期を分散したりするなどリスク分散を図る必要がある。
  2. ‘チャニー’で同様の温度処理試験を行ったところ、15°C区と25°C区の着果率に有意差はなかった(未発表データ)。‘チャニー’のように、着果率が低温の影響を受けにくい品種の活用もドリアンの安定生産を図るために有効である。
  3. 東南アジアにおけるドリアンの遺伝資源は多様である。結実が低夜温の影響を受けにくい遺伝資源の調査や活用が望まれる。開発した温度制御装置は、調査ツールとして有用である。
図表1 236915-1.jpg
図表2 236915-2.jpg
図表3 236915-3.jpg
図表4 236915-4.jpg
図表5 236915-5.jpg
図表6 236915-6.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2014/2014_B05.html
カテゴリ 遺伝資源 温度処理 環境制御 受粉 ドリアン 品種

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