生態的特性に基づく小河川での小型コイ科魚類個体群の保全管理

タイトル 生態的特性に基づく小河川での小型コイ科魚類個体群の保全管理
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 森岡伸介
小出水規行
Bounsong Vongvichith
発行年度 2014
要約 インドシナに広く分布する小型のコイ科魚類Rasbora rubrodorsalisは、ラオス中山間農村の重要な食料タンパク源である。本種は短命で、年に複数回世代交代しながら、周年繁殖している。こうした生態的特性に基づき、本種の個体群保全には、季節的な漁獲規制より、上流域の周年的禁漁区の設定が有効である。
キーワード ラオス在来魚類、成長、繁殖、小河川、保全管理
背景・ねらい ラオスを含むインドシナ各国の農業水路等の農業関連水塊に、コイ科の小型在来種Rasbora rubrodorsalisは広く分布する。本種は最大体長30mm強の小型種ではあるが、中山間農村では農業水路・水田内に豊富に分布し、農民の重要な食料タンパク源となっている。しかし、近年の外来種の侵入・定着や農村開発等による環境の変化により、本種の生息が脅かされる可能性があり、特に、中山間農村の小河川に隔離された本種個体群の衰退が懸念されている。そこで、成長・繁殖解析を通じて、本種の小河川個体群の動態を解明し、その知見に基づいた保全管理の方法を策定する必要がある。
成果の内容・特徴
  1. Rasbora rubrodorsalisは(図1)、性比が大きくメスに偏り(M : F = 0.43 : 1)、メスの方がオスよりも大型化する(図表略)。
  2. 生殖腺熟度指数に基づく成熟メス出現率は日長とともに増加する(図表略)。繁殖盛期は3~10月の高水温期であるが、11~2月の低水温期にも成熟メスは出現しており(図2;生殖腺熟度指数11%以上)、繁殖は周年行われている。成熟メスは、高水温期で体長20 mm以上、低水温期で23 mm以上であり(図2)、これに基づいてメスの成熟日齢を推定すると、高水温期で生後約50日、低水温期で80日以降となる(図3)。
  3. 耳石日輪解析に基づく本種の寿命は、メスが150日弱、オスが100日弱と短命で、年に複数回の世代交代が生じていると考えられる(メスで2~3回/年、オスで3~4回/年)。
  4. 本種は寿命が短いため、季節的な漁獲規制では個体群を保全することは難しい。体サイズ(最大体長30 mm強)から推定される遊泳能力からすれば、中流部に小滝(落差約1 m)のある対象河川の下流部から上流部への遡上の可能性は極めて低いが、溜め池等の上流部の個体群が保全されれば、下流部への個体流下による周年的な資源供給が見込まれる。従って、上流部で周年的な禁漁措置を実施し産卵個体群を保全する一方で、下流部での継続的漁業を実施することで、本種を保全しつつ地域住民のタンパク供給に資することができる(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 魚類資源管理に関する行政機関・援助機関に、在来魚類資源保全手法として活用される。漁獲規制だけでなく、生態環境保全対策も併せて実施してゆく必要がある。
  2. 同所的に生息するコイ科のEsomus mettalicusやタカサゴイシモチ科のParambassis siamensisでは、地理的隔離に起因すると推察される遺伝的多様性の低下が観察されている。本種でも同様の可能性は高く、今後マイクロサテライトマーカーの解析等を通じ、個体群の健全性を評価する必要がある。
図表1 236919-1.jpg
図表2 236919-2.jpg
図表3 236919-3.jpg
図表4 236919-4.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2014/2014_C02.html
カテゴリ 水田 中山間地域 繁殖性改善

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