一貫作業システムの切り札 コンテナ苗の植栽試験結果

タイトル 一貫作業システムの切り札 コンテナ苗の植栽試験結果
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 宇都木 玄
壁谷 大介
田中 良明
鹿又 秀聡
八木橋 勉
駒木 貴彰
大石 康彦
北原 文章
発行年度 2015
要約 コンテナ苗の普及・定着に向けて東北地方と関東地方で植栽試験を行い、普通苗との成長比較を行いました。活着率は普通苗と遜色なく、がっしりした苗であれば樹高成長も普通苗と同等以上であることが確認されました。
背景・ねらい 人工林伐採後の再造林を進めるためには植栽経費の削減が課題です。その切り札として、植栽時期を選ばないコンテナ苗が注目されています。しかし、日本におけるコンテナ苗の歴史は浅く、地域や樹種ごとの植栽成績については十分なデータがありません。そこで、東北及び関東地方に植栽されたスギコンテナ苗の植栽成績を調査しました。その結果、活着率は通常時期に植栽の普通苗と比べ遜色ないことがわかりました。また、植栽時の形状比(苗高/ 直径)がその後の成長に影響することがわかってきました。形状比が小さく、がっしりしたコンテナ苗であれば、普通苗と同等かそれ以上の樹高成長を示すことが確かめられました。

形状比
樹木の高さを樹木の直径(一般には胸高直径、苗木では根元径)で割った値。
成果の内容・特徴 コンテナ苗の地域に応じた実態
再造林の低コスト化には、伐採から植栽までを一連の作業として行う「一貫作業システム」と、植栽時期を選ばない「コンテナ苗」の組み合わせが有効です。また、衰退する苗木生産を改善する切り札としても、コンテナ苗による生産の効率化と省力化が期待されています。しかし、根が筒状に密集する「根鉢」(写真1)が形成されるコンテナ苗が、林地でどのような成長を示すか、従来用いられてきた普通苗より成長が劣ることはないか、異なる樹種や地域での成長特性などを明かにする必要があります。

コンテナ苗の成長
スギのコンテナ苗と普通苗について、植栽成績の比較調査を東北地方と関東地方で実施しました。東北地方は冬季に積雪に覆われますが、そのような環境でも秋に植栽したコンテナ苗の活着率は94% 以上であり、普通苗と同等の良好な成績でした。樹高(苗高)成長は、普通苗に比べて悪い場合(雨塚山(あめづかやま)、宮城県白石市)と良い場合(御山(おやま)、岩手県二戸市浄法寺町)があります(図1)。これは植栽直後の成長が、苗木の形に影響されているためと考えられます。苗木の苗高と地際直径の比「形状比」が大きい(細長い)コンテナ苗の場合は、植栽後の樹高成長がよくありません。それに対して、形状比の小さい(がっしりした)場合は、植栽直後から良好な成長を示しました。
一方、関東地方で実施している20ヶ所を超える植栽試験地の調査結果でも、普通苗と植栽時期を変えたコンテナ苗で活着率に差はありませんでした。植栽直後のコンテナ苗の形状比は75 以上と普通苗よりも大きく、苗の形状は細長いのですが、1成長期後には普通苗とほとんど同じくらいにがっしりした形状になりました。樹高成長についてみると、コンテナ苗と普通苗はほぼ同等の成長を示しました。これら多くの植栽試験の結果から、植栽時点の形状が細長いコンテナ苗は、成長の初期段階では直径成長を優先させ、ある程度太くなるのを待って、樹高成長を進めることがわかりました。

コンテナ苗への期待と課題
植栽直後のコンテナ苗の成長を高めるためには、コンテナ苗の形状比を小さく、がっしりした形状にするような配慮が必要です。コンテナ苗は、環境条件を制御したハウス内で、狭いスペースで効率的に多くの苗を生産できる反面、育苗中の苗間が狭く、苗木が細長くなる(形状比が大きくなる)傾向があります(写真2)。今後、形状比が小さくなるようなコンテナ苗の生産方法を開発し、樹種特性や地域環境に適合したコンテナ苗を、短期間かつ低コストで育苗する技術を開発することで、人工林の再造林を全国的に推進することが期待されます。

本研究は、農食研プロジェクト「多雪地域の森林資源持続に向けた低コスト再造林システムの構築」と農林水産省受託事業「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業」のうち「コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究」の成果です。
図表1 236928-1.jpg
図表2 236928-2.jpg
図表3 236928-3.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p6-7.pdf
カテゴリ 育苗 省力化 低コスト 苗木生産

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