タイトル | コンテナ苗の低コスト化のための充実種子選別技術 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究担当者 |
宇都木 玄 飛田 博順 松田 修 原 真司 |
発行年度 | 2015 |
要約 | コンテナ苗の効率的な生産に欠かせない充実種子の選別技術として、赤外光を照射したときの反射率の違いで充実種子を見分ける方法を開発し、95%の確率で充実種子を選別することが確かめられました。 |
背景・ねらい | 従来の苗に比べて植栽適期が広いコンテナ苗は、皆伐に続けて再植林する「一貫作業システム」での利用が期待されていますが、価格が高いという問題がありました。その一因は生産効率の低さです。スギやヒノキなどの種子は発芽率が低く、発芽した苗を植え替えたり、間引く手間が必要でした。本研究では、健全な充実種子と不稔(ふねん)種子とを、特定の波長域の赤外光(1,730 ナノメートル(nm) 付近)を照射したときの反射率の違いから見分ける技術を開発し、充実種子を95%の確率で選別することに成功しました。発芽率の高い充実種子のみを選別することで、一粒播種(いちりゅうはしゅ)※による安価なコンテナ育苗技術の開発が期待されます。 ※一粒播種 確実に発芽する種子を使い、コンテナに1粒ずつ播種する事。確実に発芽すれば、コンテナ苗生産における作業工程が大幅に低減するとともに、機械化にも繋がります。 |
成果の内容・特徴 | これまでの充実種子の選別法 主要な造林樹種であるスギやヒノキでは、しばしば発芽に必要な構造や成分を欠く不稔種子(発芽しない種)が形成され、また、その頻度は採取地や採取年により大きく変動します。種子の選別は、これまで外観(肉眼選)や大きさ(篩選(しせん))、さらに重さや比重(水選・塩水選)を手がかりに行われてきました。しかし、健全な充実種子と不稔種子との間でこれらの特性が似ているため、両者を効率的に選別する方法がありませんでした。 赤外光を利用した新しい選別方法 種子を切断すると( 図1)、内部の構造や成分の違いから、充実種子と不稔種子が判断できますが、種子を切断してしまうと発芽能力は失われてしまいます。本研究では、種子内部の違いを非破壊的に検出する方法として赤外光を利用しました。私たちの目に見える可視光の波長は380 ~ 780nm の範囲にありますが、その短波長側が紫外光、長波長側が赤外光とよばれます。赤外光を種子に照射すると、種子を構成する有機物の化学構造に依存した固有の波長の光を吸収します。種子内部の違いを検査する方法として、このような赤外光の性質に着目しました。しかも、赤外光は透過性が高いため、種皮等の薄膜を隔てた内側の性質を調べることに適しています。その結果、充実種子は不稔種子より1,730nm 付近の赤外光を吸収し外にはね返しにくい(反射しにくい)性質をもっており、赤外線カメラに「暗く」映る種子ほど、充実種子である可能性が高いことがわかりました(図2)。そこで1,730nm 付近の反射率の差を表す指標(充実種子指標:SQI)を考案して解析した結果、95% という高い確率で充実種子を選別することができました ( 図3)。 効率的なコンテナ苗生産に向けて 本研究の技術を用いて、充実種子を確実に選別できれば、コンテナ苗を効率的に生産できます。つまり、苗畑で発芽した個体をコンテナに移植したり、コンテナに多めに播種して発芽した個体を間引く等、育苗にかかる時間と労力を軽減することで、苗木の生産性が飛躍的に高まり、植栽適期が広いコンテナ苗を安い価格で供給できます。加えて、一粒播種機などの農業機械を併用すれば、播種から苗木の出荷までの多くの工程を自動化し、更なる低コスト化を実現できる可能性があります。 本研究は、農林水産省受託事業「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業」の「コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p8-9.pdf |
カテゴリ | 育苗 機械化 出荷調整 低コスト 播種 |