劣化機構の解明から木質ボードの高耐久化を目指す

タイトル 劣化機構の解明から木質ボードの高耐久化を目指す
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 高麗 秀昭
発行年度 2015
要約 木質ボードを長期間使用した場合の耐久性能について、その評価方法を開発し、強度低下の原因を明らかにするとともに、それを防ぐ方法を明らかにしました。
背景・ねらい 木質ボードを建築物に利用するためには、強度性能を長期間維持することが求められます。そのためには、強度低下の原因を解明する必要があります。そこで、温水浸せき試験と屋外暴露試験を実施し、木質ボードの強度低下の原因を明らかにしました。木質ボードは水分が浸入することにより圧縮された木材が膨張し、厚くなります。これをスプリングバックといいます。このスプリングバックにより接着点が崩壊すると、強度低下の原因となります。さらに、接着点の崩壊によりボード内部に空隙が生じると、そこが腐朽し易くなります。この腐朽により、ボードの強度はさらに低下します。木材の強度を低下させないためには、ボード内部への水の浸入を阻止し、スプリングバックを防ぐことが有効であることが分かりました。
成果の内容・特徴 木質ボードの特徴
一般に、木質ボード(以下ボードとよびます)は、細かく粉砕した木片に接着剤を吹き付け、それをホットプレスで高熱をかけながら圧縮し、同時にその熱で接着剤を硬化させて作ります。細かく粉砕した木材を原料とするため、建築解体材なども原料として利用できます。このため、ボードは木材のリサイクルの一翼を担っています。しかし、ボードでは、圧縮された木材にひずみが残り、これが水を吸収すると元に戻ろうとします。これをスプリングバックと呼びますが、スプリングバックにより接着点が崩壊し、ボードの強度を低下させる原因になることが知られています。

温水浸せき試験
ボードの耐久性を評価するために、ボードを温水中に浸せきし、スプリングバックを誘発させ、強度低下を評価する試験があります(図1)。一般的にはボードを温水中で使用することはありませんが、この試験によって短時間でボードの耐久性を推定することができます。

屋外暴露試験

従来のボードは室内で使うことを想定しています。しかし、仮にボードが屋外で使用できたらその需要は拡大すると考えられます。そのため、屋外での耐久性について屋外暴露試験を実施し、ボードの強度低下を調べました(図2)。その結果、屋外暴露により雨水がボード内部に浸入し、温水浸せき試験と同じようにスプリングバックが発生することがわかりました。

木質ボードの強度低下の原因
温水浸せきしたボードの強度低下と屋外暴露したボードの強度低下を図3 に示します。どちらもスプリングバックが大きくなると強度が大きく低下しました。これはスプリングバックにより接着点が崩壊したために強度が低下したためと考えられます。しかし、前者と後者の強度低下には差が認められます。同じスプリングバックの状態でも後者の強度の方がより大きく低下しました。これは屋外暴露したボード内部が腐朽したためです(図4)。ボードの強度が低下する原因には、スプリングバックの他に、腐朽も原因になることが明らかになりました。

木質ボードの強度低下を防ぐには
ボードは、まず水分が浸入することによりスプリングバックが生じ、接着点が崩壊します。このプロセスは温水への浸せき試験と屋外暴露試験でも同じです。従来は温水への浸せきだけでボードの強度の低下を評価しようと考えていましたが、屋外などの環境で使用する場合には腐朽も考えなければならないことがわかりました。また、水のボード内部への浸入を阻止すればボードも屋外でも使用できる可能性が示されました(図5)。

本研究は、科学研究費助成事業(21380108)により実施した、日本木材学会木質パネル研究会「木質パネル第2 次耐久性プロジェクト」の成果です。
図表1 236936-1.jpg
図表2 236936-2.jpg
図表3 236936-3.jpg
図表4 236936-4.jpg
図表5 236936-5.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p22-23.pdf
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