タイトル | 未利用資源の中の宝物 ―健康に役立つ抽出成分の機能あれこれ― |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
大平 辰朗 松井 直之 金子 俊彦 |
発行年度 | 2015 |
要約 | 林業で発生する枝葉などの残材はほとんど利用されず、多くは廃棄されていますが、それらの中にはストレス等の軽減効果、有害物質浄化効果など健康に役立つ効果を有する成分が含まれ、高い利用価値を持つことがわかりました。 |
背景・ねらい | 伐採や枝打ちなどの作業からは枝葉など様々な未利用資源が発生します。現状ではそれらのほとんどは廃棄されてしまいます。しかしながら、未利用の枝葉の精油成分とその残渣がどのような機能を持つかを調べた結果、気分・ストレスの改善効果、花粉症の原因となる花粉アレルゲンの活性低減効果、二酸化窒素等の環境汚染物質の浄化効果、アンモニア等の悪臭の浄化作用など、私たちの健康増進に役立つ効果を持つことが明らかとなりました。これまで未利用であった枝葉等が、実は宝の山として役立つことがわかりました。今後の有効利用につながり、林業収入増加の一助となることが期待されます。 |
成果の内容・特徴 | 精油のにおいでストレス解消 林業の現場では枝葉などの林地残材が大量に発生し、その多くが未利用のまま放置されています。こういった未利用林地残材の有効な利用法の開発を目的として、北海道に生育するトドマツの葉から精油(葉油)を抽出しました。人間がこの精油のにおいを嗅いだときの気分やストレス状態がどのように変化するかを調べたところ、リラックス感が向上するとともに不安感が減少して気分状態が改善することがわかりました(図1)。また、唾液中に含まれるストレスホルモン類が減少したことから、トドマツ葉のにおいにはストレスを解消するはたらきがあることが明らかになりました(図2)。 精油が花粉症の症状をやわらげる? スギ花粉によるアレルギー症状は、花粉が含有するアレルゲンという物質によって発生するといわれています。この症状は、二酸化窒素などの大気汚染物質がアレルゲンとともに存在するとより重篤化します。他方、トドマツ精油とアレルゲンを接触させると、その活性が大きく低減することが判明しました(図3)。なぜ活性が低減するのかについては、まだ研究中ですが、将来的には花粉症の症状の改善に精油のにおいを役立てられる日が来るかもしれません。 残りものにも福がある さて、葉から精油を抽出した後には大量の残渣が発生します。トドマツ葉の残渣の特性を調べたところ、アンモニアなどの悪臭を低減する効果の他に、精油と同様に二酸化窒素の除去能力が高いことが明らかになりました。この特徴を応用するため、トドマツ葉残渣の微粉末入りの和紙を試作し(図4)、残渣を加えない和紙(対照)との間で二酸化窒素除去能力を比較したところ、残渣の添加量を増すと除去能力が向上することがわかりました(図5)。この残渣は建材への適用も可能であり、居住空間で使用する内装材等への利用により、空気環境を安全で快適なものにすることができると期待されます。 これらの成果は、枝葉等が精油成分としてだけでなく、その残渣までも余すこと無く総合的に利用できることを示しています。このような利用法を拡大することで、廃棄されている枝葉等の有効利用が可能となり、ひいては林業収入増加の一助となることが期待されます。 「ストレス軽減効果」の研究は北海道大学との共同研究、「花粉症症状軽減効果」の研究は埼玉大学との共同研究による成果です。また、花粉症症状軽減効果に関しては特許出願中です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p30-31.pdf |
カテゴリ | 未利用資源 |