タイトル | 海岸林が津波を抑える効果と津波に耐える力 ―クロマツの密度と広葉樹導入が及ぼす影響― |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
野口 宏典 坂本 知己 金子 智紀 新田 響平 渡部 公一 上野 満 |
発行年度 | 2015 |
要約 | クロマツ海岸林が津波を抑える効果や津波への耐性に対して、クロマツの本数密度管理と下層への広葉樹導入がどのような影響を及ぼすのかを、数値シミュレーションによって明らかにしました。 |
背景・ねらい | 2011 年の東日本大震災を契機として、海岸林が津波を抑える効果に対する注目が高まっています。そこで、海岸林の管理(密度管理と下層への広葉樹の導入)が津波を抑える効果に対してどう影響するかを数値シミュレーションによって評価しました。その結果、過密クロマツ林に比べて、密度管理を行なったクロマツ林は、津波を抑える効果は低いものの、より大きな規模の津波に耐えられることが明らかになりました。また、クロマツの下層に導入する広葉樹は、津波への耐性は小さいものの、その存在によってクロマツ林だけの場合よりも津波を抑える効果を高めることを明らかにしました。 |
成果の内容・特徴 | 津波を抑える効果が高い海岸林とは 東北地方太平洋沖地震津波をきっかけに、海岸林が津波を抑える効果に注目が高まりました。被災した海岸や、将来津波の襲来が懸念される地域の海岸では、海岸林の整備が進められています。整備の現場では、津波を抑える海岸林の効果はどのくらいか、どのような海岸林で効果が高いのかという切実な問いかけがあります。そこで、過密になり細いクロマツ(形状比※ 106)で構成されている林(過密クロマツ林)、密度管理が行われて適正な太さのクロマツ(形状比60)で構成されている林(管理クロマツ林)、適正な密度のクロマツの下層に広葉樹が導入された林(広葉樹導入クロマツ林)の3 つの典型的なタイプの海岸林について、津波氾濫流の数値シミュレーションを行い、密度管理と広葉樹の導入がクロマツ林の津波を抑える効果に及ぼす影響を推定しました(表1)。 管理の異なる海岸林が津波を抑える効果 海岸林が、津波を抑え、水深や線流量※を低下させる効果については、過密クロマツ林と広葉樹導入クロマツ林は同等で、それらに比べて、管理クロマツ林の効果は半分程度であることが分かりました(図1、図2)。 樹木の物理的被害の発生しやすさ 同じ規模の津波に対する樹木の物理的被害の発生しやすさは、管理クロマツ林、過密クロマツ林、広葉樹導入クロマツ林の順に大きくなりました(図3)。ただし、広葉樹導入クロマツ林で被害が発生しやすいのは、主に下層の広葉樹であると考えられます。 密度管理と広葉樹導入の効果 過密クロマツ林に比べて、密度管理を行なったクロマツ林は、津波を抑える効果は低いものの、より大きな規模の津波に耐えられることが明らかになりました。これは、密度管理によって個体が太くなり、耐性が高まったためと考えられます。クロマツの下層に導入する広葉樹は津波への耐性は小さいものの、その存在によってクロマツ林だけの場合よりも津波を抑える効果を高めることを明らかにしました。 本研究は、農林水産業・食品産業科学技術推進事業(農林水産省)「津波被害軽減効果の高い海岸防災林造成技術の開発」による成果です。 ※形状比 樹木の高さを樹木の直径(一般には胸高直径、苗木では根元径)で割った値。 ※線流量 単位時間当たりに単位幅を通過する体積。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p50-51.pdf |
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