タイトル | 忍び猟でシカを減らす |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
小泉 透 大橋 正孝 枝澤 修 松坂 勝士 早川 五男 岩崎 秀志 |
発行年度 | 2015 |
要約 | あらかじめ決められた場所で、2名の捕獲者が3~4ヶ月間「忍び猟」という方法で繰り返しシカを捕獲することにより、3年間でシカを約600頭捕獲し、シカの出現頻度を半分程度まで減少させることができました。 |
背景・ねらい | シカは全国で約300 万頭が生息し、その数は今後も増加すると予想されています。一方、捕獲の担い手である狩猟免許所持者数はこの30 年間で半分以下に減少し、この傾向は今後も続くとされています。そこで、富士山麓の国有林を管理する静岡森林管理署管内で少人数で効率よく確実にシカを減らす方法として、2012 年から忍び猟によるシカ管理を始めました。あらかじめ捕獲する場所を決め(約14km2)、2 名の捕獲者が4 ヶ月間忍び猟を繰り返してシカを捕獲することにより、3 年間でシカを約600 頭捕獲し、シカの出現頻度を半分程度まで減少させることができました。また、捕獲者1 人1 日あたりの捕獲数は0.77 ~ 1.44 頭と捕獲効率も非常に高いことが分かりました。 |
成果の内容・特徴 | 増えるシカと減るハンター シカは国土の50%以上に生息し、個体数は約300 万頭に達すると推定されています。毎年40 万頭以上が捕獲されているにも関わらず、今後も個体数は増加すると予測されています。一方、これまでシカ捕獲の担い手であった狩猟免許所持者の数は、平成24 年度には全国で約18 万人と30 年前の半分以下に減ってしまいました。 巻き猟と忍び猟 ハンターが減った結果、伝統的に行われてきた巻き猟(巻き狩り)によるシカ捕獲ができなくなってしまう地域もでてきました。巻き猟は、隠れているシカを追い出す勢子(せこ)と追い出されたシカを銃器で撃ちとる待ち手に分かれて行うグループ捕獲です。1つのグループの人数は、捕獲目的や場所により異なりますが、10 名程度が一般的で、これに3 ~ 5 頭の猟犬が勢子に加わります。 これに対して、忍び猟は捕獲者が単独でシカの痕跡をたどって追跡し、双眼鏡などで捜しながらシカに気づかれないように忍び寄って銃器で捕獲します。日本では巻き猟ほどに一般的ではありませんが、忍び猟は全国各地で行われています。 忍び猟の効率 富士山国有林を管理する静岡森林管理署では、人穴地区(静岡県富士宮市)の約14km2 に捕獲地域を定め(図1)、2012 年から2 名の捕獲者が毎年約3 ~ 4 ヶ月間忍び猟によるシカ捕獲を行っています。単独または3 頭以下の群れの場合のみ捕獲することとし、2012 年は8 ~11 月の96 日間で277 頭、2013 年は8 ~ 12 月の118日間で189 頭、2014 年は10 ~ 12 月の86 日間で133頭を捕獲しました。捕獲効率は(捕獲者1 人1 日あたりの捕獲数)は0.77 ~ 1.44 頭/人日となり(図2)、2012年に近隣地区で行われた巻き猟(0.24 頭/人日)より高い結果となりました。 忍び猟の効果 捕獲の効果を測定するため、捕獲地域を1km メッシュに分割し、それぞれのメッシュに2 台ずつ合計31 台のセンサーカメラを設置し(図1)、毎年捕獲が始まる前の9 日間シカの通過頻度を測定しました(図3)。総通過数は、2012 年153 頭、2013 年79 頭、2014 年70 頭と減少し(図4)、同一地点の比較でも2012 年と2014 年では通過数が有意に減少していることがわかりました。忍び猟は、シカの行動をかく乱しないように単独または少数の群れだけを繰り返し除去することから、大きな群れができない地域や季節にシカの数を減らす有効な捕獲方法といえます。 本研究は、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「林業被害軽減のためのニホンジカ個体数管理技術の開発(2011 ~ 2014 年度)」、攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業「ローカライズドマネジメントによる低コストシカ管理システムの開発(2014 ~ 2015 年度)」による成果です。 なお、シカの捕獲は「ニホンジカとの共存に向けた生息環境等整備モデル事業(富士宮市鳥獣被害防止対策協議会)」「富士山地区造林請負事業(静岡森林管理署)」により実施されました。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p54-55.pdf |
カテゴリ | 管理技術 管理システム シカ 鳥獣害 低コスト |