タイトル |
エリアンサス(Erianthus arundinaceus)は施肥以外の給源からの窒素獲得能が高い |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2009~2014 |
研究担当者 |
松波寿弥
小林真
安藤象太郎
寺島義文
霍田真一
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発行年度 |
2014 |
要約 |
エリアンサスが少ない施肥条件でも多収性を示すのは、土壌など施肥以外の給源からの窒素獲得量が多いことによる。
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キーワード |
エリアンサス、資源作物、窒素
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背景・ねらい |
バイオ燃料技術革新計画(2008年策定)及びバイオマス活用推進基本計画(2010年閣議決定)に基づいて、食料と競合しない原料作物の研究開発が進められており、長期的多収性や燃料特性(低灰分・高発熱量)の面からイネ科多年生草本エリアンサスが注目されている。エリアンサスは少肥でも多収性を示すことが報告されているが、持続的多収と効率的施肥管理を両立させるため、その要因となりうる施肥窒素の利用率及び吸収された窒素の由来を定植後2年間にわたって明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 畜産草地研究所(栃木県那須塩原市)において2009年6月9日に栄養系で定植(畦間2m・株間2m)し、窒素・リン酸・カリウムを年間90kg/ha施用したエリアンサス系統「JW630」の収穫部(茎葉上部)の乾物収量は、1年目(2009年10月および2010年3月)には2t/haと少ないが2年目(2010年10月)には24t/haに達する(表1)。
- 1年目に採取した植物体の全窒素量は67~76kgN/haである。一方、2010年3月に刈取・再生後、2年目に刈り取った植物体の全窒素量は290~309kgN/haに増大し、茎葉上部の全窒素量すなわち収奪量は199~204kgN/haと施肥量(90kgN/ha)を大幅に上回る(表1)。
- 植物体全体の施肥窒素の利用率(各部位合計の施肥由来窒素量÷施肥量(90kgN/ha))は、1年目(2009年10月)では28%と低いものの2年目(2010年10月)では60%に高まる(表1)。
- 1年目では全窒素量の67%が施肥以外の給源(土壌など)に由来する。一方、2年目では1年目の冬季に刈株に貯蔵された窒素が15%、2年目に吸収された施肥由来窒素が20%(2009年施用の窒素3%+2010年施用の窒素17%)、残りの65%がこれら以外の給源に由来する。すなわち、2年目の植物に含有される全窒素のうち、施肥以外の給源に由来する割合は80%と高い(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
- エリアンサスは深根性で茎葉下部への養分循環機構を有しており、施肥以外の給源(土壌・刈株等)からの窒素獲得能が高いことが少肥で高い収量を示す一因と推察できる。
- 耕作放棄地等、肥沃度が低い土壌での栽培に向けた有用な知見となりうる。
- 収奪量が施肥量を上回る状況が続くと経年的に土壌肥沃度が低下する可能性があるので、持続的多収のための肥培管理法を検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2014/nilgs14_s19.html
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カテゴリ |
栽培技術
施肥
多収性
肥培管理
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