タイトル |
潤滑油等の分析によるポンプ設備の総合診断システム |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2012~2014 |
研究担当者 |
國枝正
水間啓慈
森充広
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発行年度 |
2014 |
要約 |
ポンプ設備から潤滑油やグリースを採取・分析して得られる情報をもとに、機器の劣化状態を診断する手法である。携帯型測定装置による一次診断と分析機関による二次診断によって分解点検や補修の適切なタイミングを判断する総合診断システムである。
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キーワード |
ポンプ設備、劣化状態、潤滑油、グリース、一次診断、二次診断
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背景・ねらい |
農業用揚排水機場は、農地ばかりではなく地域の用排水を担う重要な施設であるが、これらの多くは老朽化が進行し、一部の施設では突発事故件数の増加も報告されている。現在、ポンプ設備には劣化状態を定量的に診断する手法がなく、供用年数等を判断基準として定期的に分解点検・補修を行う方式が適用されている。そこで、ポンプ設備の回転部(減速機や軸受)から潤滑油やグリースを採取・分析することによって、設備を分解することなく劣化状態を定量的に診断し、劣化が致命的な故障にいたる前に異常を検知して、突発的な故障リスクを低減するための新たな総合診断システムの構築を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- ポンプ設備で現在実施されている供用後一定の期間が経過すれば定期的にポンプ設備を分解点検や補修を行う維持管理方法に替わる新たな総合診断方式を提案する(図1)。新たな方式は、まず、既に開発済である携帯型測定装置を用いて施設管理者自らが潤滑油・グリースの劣化度について、一次診断である4項目(表1)を判定する。
- 一次診断の結果、異常が見つかれば、専門の分析機関に詳細な二次診断を依頼する(図2)。二次診断の診断項目は、JIS規格等で定められる24項目の中から農業用ポンプ設備の特徴を踏まえて調査した結果により選定した11 項目を用いることで、効率的な二次診断が可能となる(表1)。この11 項目の分析により、ポンプ設備のどの部分が劣化しているのか、異常個所の特定が可能となり、従来のすべての設備をオーバーホールするような高い費用をかけずとも、劣化している個所のみを効果的に補修ができる。一次診断の結果から直接ポンプ設備の補修を行う方法より、二次診断を仕組むことでポンプ設備の維持管理費節減に大きく貢献する。
- 新たな診断方法を導入した場合の維持管理上のメリットを図3に示す。従来の定期分解による維持管理方法では、ポンプ設備の健全度にかかわらずコストが発生するのに対し、新たな総合診断方式では、ポンプの健全度および劣化進行の情報を取り入れた適切なタイミングでの分解点検や補修が可能となる。すなわち、日常点検による軽微な維持管理コストは発生するが、劣化が致命的な故障にいたる前に異常を検知して、突発的な故障リスクを低減することが可能となる。この方式は他の公共施設にも応用可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:農林水産省や都道府県の技術者、土地改良区の施設管理技術者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:行政施策に反映される指針への掲載と、全国の基幹的な農業用揚排水機場2,800箇所以上での適用を想定している。
- その他:一次診断の結果により二次診断に移行する管理基準値の設定にあたっては、厳しい管理基準値を設定すると補修頻度が過剰となり、甘く設定すると故障リスクが大きくなるため、ポンプ設備管理基準値設定に向けて実測データを数多く集積することが必要である。データ集積のための施設管理者の協力が不可欠である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/14_070.html
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カテゴリ |
管理技術
コスト
データ集積
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