タイトル |
ため池氾濫解析時の解析条件や浸水域での留意事項 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2012~2014 |
研究担当者 |
正田大輔
川本 治
吉迫 宏
井上敬資
鈴木尚登
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発行年度 |
2014 |
要約 |
ため池ハザードマップ作成時に実施する氾濫解析においては、ピーク流出時間を遅らせると危険側の結果となるケースがある。また、下流水路にボックスカルバートがある場合には、目詰まりを起こす可能性があるため、解析上注意が必要となる。
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キーワード |
ハザードマップ、氾濫解析、ため池減災
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背景・ねらい |
東日本大震災ではため池の決壊により、下流域に甚大な被害が生じている。また、2014年8月等の豪雨災害時にもため池が被災している。このため池被災を受け、ハザードマップ作成ニーズが行政や住民の間で高まっていることから、精度よく浸水域を予測する技術が必要となっている。そこで、ため池氾濫解析時の流出ハイドログラフの設定が解析結果に与える影響と、現地調査により明らかになった解析結果の留意事項について整理する。
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成果の内容・特徴 |
- 氾濫解析の解析条件である流出ハイドログラフ(図1(a))において、ピーク流出時間が早く現れる(瞬時流出)ケースとピーク流出時間が遅れて現れるケースの解析結果を比較すると、ピーク流出時間が遅れるケースでは下流でピーク水深が大きくなる場合がある(図1(b))。このため、危険側になる可能性のあるピーク流出時間が遅れて現れるケースについても検討することが望ましい。
- 異なる解析条件として、流出ハイドログラフのピークを1.8倍とした場合(図1(a))、総流出量が同一であっても浸水域にある任意の6点の平均値として水深は約1.7倍、流路の幅は約1.4倍となる。ピーク流量の設定により、下流の浸水域や浸水深が異なる結果となるため、以下に示す複数のピーク流出流量式を用いて、浸水域の検討することが望ましい。
- ピーク流量(表1)の算出式である、Costa式と、Froehlich式、土地改良事業の費用対効果算定手法における特徴は次のようになる。(I) Costa式の場合、パラメータによる算出結果の変動は他の式と比較して小さい。(II) Froehlich式の場合、概ね他の式より小さい値をとるが、堤高が約10mを超える場合は値が大きくなるケースがある。(III) 費用対効果算定手法の場合、決壊高さを用いた算出結果ではCosta式と近い値を示したが、堤高を用いた結果は10倍以上大きくなる。堤高が約5mを超えると費用対効果算定手法では算出結果が大きくなる傾向にあるため、解析結果については十分な検討が必要である。
- 流路下流にあるボックスカルバートの目詰まりを再現するため、目詰まりが発生した箇所(図2 (a)、(b))において、解析条件である元標高データを上昇させた再現解析を行うと、実際の状況を反映した結果となる(図2 (b))。ため池下流のボックスカルバートの目詰まりによる氾濫域の変化により、民家や重要構造物等に被害を与える可能性がある場合は、目詰まりを考慮した解析を実施し、氾濫域の変化について確認することが望ましい。
- 土砂流出が生じた決壊現場においては、土砂はため池直下で流速が速い箇所まで運ばれ、堆積する(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、都道府県・市町村及び土地改良区等の技術者を対象としている。
- 氾濫解析を用いてハザードマップを作成する際に、作成技術者の技術的な参考情報として活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/nkk14_s10.html
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カテゴリ |
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