タイトル |
土壌情報閲覧システムの開発と利用 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
高田 裕介
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発行年度 |
2014 |
要約 |
[ポイント]- わが国全国各地の農地に分布する土壌の種類と性質に関する情報をインターネット上で誰でも簡単に調べることができる土壌情報閲覧システムを開発しました。
- このシステムは各都道府県の農業改良普及所等が行っている営農指導、農地からの温室効果ガス排出量の算定などに広く活用されています。
[概要]- 農環研では、長年にわたって蓄積してきた全国各地の農地土壌に関する情報を体系化して「土壌情報閲覧システム」を開発し、平成 22 年 4 月にインターネット上で公開しました。
- 本システムには 5 年間で 180 万件を超えるアクセス数があり、農業生産現場はもとより、様々な分野における行政、研究・技術開発、技術指導、教育などに広く活用されています。
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背景・ねらい |
土壌は養分や水を保持して植物に供給し、農業生産を支えるとともに、有機炭素の貯留や温室効果ガスの発生など、地球規模の物質循環においても重要な 役割を果たしています。これらの土壌が有する機能は、土壌の種類やその性質によって大きく異なります。そのため、土壌の機能を最大限に発揮して環境調和型 の農業生産を実現するためには、土壌の種類やその性質に応じた管理が重要となります。しかし、これまで専門家以外の方が土壌の種類ごとの分布状況やその性 質を調べることは困難でした。 一方、わが国には、1950年代以降、農林水産省の事業として全国都道府県の公設試験研究機関が調査した膨大な農地土壌データが蓄積されています。 農環研では、これらのデータを活用し、日本全国のデジタル農地土壌図を作成するなど、土壌に関するインベントリー研究を推進してきました。そこで、これら の研究成果と土壌に関する情報を体系化してインターネット上で公開することで、どなたでも簡単な操作で土壌を調べることができる「土壌情報閲覧システム」 を開発しました。
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成果の内容・特徴 |
- 本システムの土壌情報は、農林水産省の補助事業として全国の都道府県が実施した施肥改善調査( 1953 ~ 1961 年)、地力保全基本調査( 1959 ~ 1978 年)、土壌環境基礎調査( 1979 ~ 1998 年)、および土壌機能モニタリング調査( 1999 ~ 2003 年)などによるデータをもとに作成しています。本システムで閲覧できるデジタル農地土壌図(1/5万縮尺)は、こういった過去の調査で得られたデータを基に作成された農地土壌図を新たな研究開発や農業現場でも活用できるように再構築したものです。具体的には、既存の農地土壌図と地目や地質などのソースの異なる情報とを空間的に統合した地理データベース(GeoDB)を開発し、新たにデジタル農地土壌図として整備したものです。本システムは、平成 22 年 4 月以降、インターネット上で公開されています( http://agrimesh.dc.affrc.go.jp/soil_db/ ) (図1)。
- 本システムには、デジタル農地土壌図のほか、土壌断面の写真や模式図を使用した土壌解説資料、作土層の理化学性データベース、土壌温度図、土壌調査地点の断面記載票など、土壌の種類ごとの一般的な情報も含まれています (図2)。
- このため、本システムの利用者は、地図や緯度経度から土壌図を検索することができるだけでなく、土壌図上をクリックするだけで、その場所に分布する土壌の種類や、土壌の種類ごとの一般的特性が記載された土壌解説資料を閲覧することができます (図2)。これにより、利用者は、都道府県が土壌の種類ごとに定める施肥基準に基づき適正な施肥を行うに当たっての基本的な情報を得ることができます。
- さらに、屋外でも本システムに登録されている土壌情報を活用できるよう、スマートフォン用のアプリケーション 「e-土壌図」 を開発し、平成 25 年 11 月から無償で配布しています (図3)。「e-土壌図」 には、(1) 土壌図閲覧機能、(2) メモ作成・共有機能、および (3) 有機物管理機能という 3 つの主要な機能があり、携帯端末で撮影したほ場の状況や作物の生育状況の画像ファイルを注釈とともに土壌図上に保存したり、ほ場にどのような堆肥をどの程度施用すると、土壌中の有機物がどのくらい増加(減少)するかを予測することができます。
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成果の活用面・留意点 |
- 本システムには5年間で180万件を超えるアクセス数があり、自治体、大学、民間企業などで、行政、研究・技術開発、技術指導、教育などの目的で広く活用されています。また、「e-土壌図」のダウンロード数は1年間で3,000を超え、多様な分野の利用者に土壌情報を提供しています。兵庫県が定めた作物栽培指針などでは、本システムを参照することで土壌の種類ごとに定められている施肥基準を確認することができると明記されました。
- 福島第一原発事故後に定められた農林水産省の農地除染対策の技術書(平成 25 年)や厚生労働省の除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン(平成 25 年)において、除染対象地域が黒ボク土に該当するかどうかの判定に引用されるなど、本システムはすでに公的な文書で活用されています。
- 農環研が公開している 「 CO2 吸収量見える化サイト(http://soilco2.dc.affrc.go.jp/)」 では、土壌の CO2 吸収量を計算する際に必要となる土壌情報を本システムから取得しています。また、「e-土壌図」 の有機物管理機能では 「 CO2 吸収量見える化サイト」 で用いている計算エンジンを使用するなど相互リンクしています。
- 今後、農業環境の評価とその保全対策にさらに活用されることを目指して、土壌中の炭素と窒素の含有量や物理性を示した地図なども本システム上で公開する予定です。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result31/result31_02.html
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カテゴリ |
施肥
データベース
土壌環境
モニタリング
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