タイトル | 那珂川水系内への特定外来生物カワヒバリガイの新たな侵入を確認 |
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担当機関 | (国)農業環境技術研究所 |
研究担当者 |
伊藤健二 |
発行年度 | 2015 |
要約 | 水利施設への障害や在来生態系への影響が懸念される特定外来生物カワヒバリガイが、那珂川水系に侵入していることを明らかにしました。現時点ではまだ侵入の初期段階と考えられますが、このまま放置すれば水系内への拡散が懸念されます。未生息地への侵入の検出や、侵入した個体群の根絶に向けた対策の実施が望まれます。 |
背景・ねらい | 近年、利根川水系の湖である霞ヶ浦(茨城県)ではカワヒバリガイの生息密度が増加しています(研究成果情報第 30 集)。霞ヶ浦の水は水路・貯水池等を経て県内を中心に広い範囲で利用されていますが、それらの水利施設を経由して水系内にカワヒバリガイの分布も拡大しています。利根川水系と河川による交流のない那珂川水系では、2014 年 5 月までカワヒバリガイの生息は確認されていませんでしたが、同年 11 月に、霞ヶ浦から水路を通じて取水している貯水池でカワヒバリガイの生息がはじめて確認されました。那珂川水系への侵入がどの程度進行しているのかを把握するために、カワヒバリガイの発見された貯水池を中心に調査を行いました。 |
成果の内容・特徴 | 那珂川水系内にある貯水池(笠間池)とその流出水路・河川および笠間池から取水している別の貯水地(不動谷津池)においてカワヒバリガイの生息状況調査を行いました。笠間池と不動谷津池は共に霞ヶ浦から管水路を経由して取水しており、そこから流出した水はそれぞれ涸沼川と涸沼前川に流入しています(図 1)。 調査の結果、カワヒバリガイは笠間池の岸の約半周にわたって生息していること、個体の殻長から推測して、遅くとも 2013 年には侵入していたことなどが明らかになりました(図 2, 図 3)。また笠間池から約 1km 下流の水路で 1 個体が確認されましたが(調査員1名の 20 分間の目視調査)、不動谷津池を含むそれ以外の地点からカワヒバリガイは見つかりませんでした(2015 年 5 月現在)。また、那珂川・涸沼前川・涸沼等で 2009 年以降実施している調査でも、カワヒバリガイの生息はこれまで確認されていません(図 4)。 今回の結果は、水利施設を経由したカワヒバリガイの分布拡大が那珂川水系でも進行しつつあることを示しており、この状況を放置すれば水系内の広い範囲へ拡散することが懸念されます。これ以上の分布拡大や被害の発生を防ぐには、新たな生息地への侵入を検出するとともに、侵入した集団の根絶に向けた対策の実施が望まれます。現在、農業環境技術研究所は水利施設を管理する組織と連携し、カワヒバリガイの侵入モニタリングの実施や防除対策への助言・評価などを行っています。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
研究内容 | http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result32/result32_38.pdf |
カテゴリ | 病害虫 防除 水管理 モニタリング |