タイトル |
モンゴル草原で放牧されるヒツジの冬季採食量はUNDP値より20%以上高い |
担当機関 |
(国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
上原有恒
山崎正史
進藤和政
A. Erdenechimeg
G. Onontuul
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発行年度 |
2015 |
要約 |
モンゴルの森林ステップおよびステップ地域の草原で放牧されるヒツジにおいて、リグニン法で求められる採食量は、同国で一般に用いられているUNDPによる値と比べて冬季に20%以上高い。よってこの時季には、草原で放牧可能な家畜頭数が少なく推定される。
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キーワード |
酸性デタージェントリグニン, 指示物質法, 消化率, 牧養力
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背景・ねらい |
モンゴルでは近年、家畜頭数が増加して草原における放牧負荷が増大し、草資源の劣化が生じるとともに自然災害のリスクが高まっている。このリスクを低減するためには、地上部現存量、家畜採食量等から算出される牧養力等の科学的データに基づき、草原を適切に管理する必要がある。しかし同国で一般に用いられている採食量は、データ収集の手法が明らかでなく、その適用可能範囲が明確ではない。そこで、放牧ヒツジの採食量を、草資源が減少する秋から翌春において推定し、牧養力を算出するための基礎データを得る。
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成果の内容・特徴 |
- 草原の地上部現存量は2月に最も低く、9月に対する2月の値は、森林ステップ、ステップでそれぞれ70.9、81.6%低下する(図1)。
- 草原の優占草種は、森林ステップではStipa spp.、Cleistogenes squarrosa、Artemisia frigida、ステップではStipa spp.、Carex pediformis、Agropyron cristatumnである。
- ヒツジの体重は、11月から2月にかけて、森林ステップ、ステップでそれぞれ13.6、8.7%減少する(表1)。
- 排糞量は、森林ステップ、ステップでそれぞれ0.475~0.665、0.467~0.550kg乾物/日であり、森林ステップでは11月から2月にかけて有意(P<0.001)に減少する(図2、表1)。
- 草中ならびに全量を採取した糞中の酸性デタージェントリグニンを指示物質として算出した消化率は、森林ステップ、ステップとも時季により有意(P<0.05)な差があり、それぞれ51.8~63.8、63.2~70.9%乾物となる(表1)。
- 排糞量と消化率から算出した採食量は、森林ステップでは1.10~1.89kg乾物/日(2.91~4.09%体重/日)、ステップでは1.30~1.73kg乾物/日(2.54~3.02%体重/日)である(表1)。
- モンゴルで一般に用いられているUNDP(2007)による採食量の値(夏、秋、冬、春それぞれ1.6、1.8、1.1、1.1kg乾物/日)と比較すると、森林ステップ、ステップとも冬季(2月)において20%以上高い値となる。このことから、冬季の牧養力は既報の値を用いて算出されるものより低くなることが示される。
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成果の活用面・留意点 |
- 異なる地域や放牧環境における採食量を本手法により求めることで、牧養力を広く比較することができる。
- 時季と植生の違いが消化率に影響を及ぼす可能性がある。
- 採食量を比較する際にはその単位(kg、%体重/日)に留意するとともに、体重を考慮する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2015_a03
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カテゴリ |
羊
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