サトウキビ白葉病を媒介するヨコバイ類の移動分散能

タイトル サトウキビ白葉病を媒介するヨコバイ類の移動分散能
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 小堀 陽一
安藤 象太郎
M.M. Thein
Y. Hanboonsong
発行年度 2015
要約 サトウキビ白葉病の媒介虫であるタイワンマダラヨコバイMatsumuratettix hiroglyphicusおよびヤマトヨコバイYamatotettix flavovittatusの試験期間(20日間)を通した平均移動距離は、それぞれ162.1m、387.5mであり、このデータは圃場での健全種茎生産技術開発に利用できる。
キーワード サトウキビ, ファイトプラズマ病, 虫媒伝染性病害, 媒介虫, 色選好性
背景・ねらい サトウキビ白葉病は、サトウキビの主要生産国であるタイにおける大きな生産阻害要因である。本病の拡散は、2種の媒介虫(図1)による伝染および汚染種茎の定植による。媒介虫による拡散を抑制する技術を開発するためには、その移動分散の実態を知る必要がある。しかし、媒介虫の体長は数ミリで、昼間はサトウキビの下部等に潜んでいることが多いため、直接観察により移動分散能を評価することは困難である。そこで、着色した媒介虫を圃場に放飼し、試験用トラップに捕獲された個体数を一定時間ごとに計数する標識再捕獲法により、その移動分散能を評価する。
成果の内容・特徴
  1. サトウキビ白葉病の媒介虫が選好する色のプラスチック板に粘着剤を塗布したトラップを、中心から50mまで放射状に配置する(図2)。その中央部から、死亡率などに有意な影響が無い蛍光顔料で着色された媒介虫を放飼し、2日ごとに各トラップに捕獲された個体数を計数する。調査は、着色された個体が捕獲されなくなる放飼後20日目まで実施する。実験は、タイワンマダラヨコバイについて3回(1,980、1,200、800頭)、ヤマトヨコバイについて2回(2,700, 2,100頭)繰り返す。1回目の試験では、いずれの媒介虫でも5m地点での捕獲数が最も多く、それぞれ30.0%および28.3%で、一方、50m地点の捕獲はタイワンマダラヨコバイでは全体の3.9%と極めて低い(図3(左))。
  2. 調査期間中の放飼虫の捕獲率は、タイワンマダラヨコバイが約10%、ヤマトヨコバイが約13%であり、移動分散能推定に十分な捕獲率であり、Yamamura (2003)の方法により、捕獲およびトラップの設置範囲外まで移動した個体の存在による移動距離の過小評価を補正し、各試験期間(20日間)における到達距離の確率分布を図3(右)に示す。
  3. これらの確率分布を基に推定する20日間の平均移動距離は、タイワンマダラヨコバイが162.1m、ヤマトヨコバイが387.5mである。
成果の活用面・留意点
  1. 白葉病の汚染地域では、健全種茎生産圃場を設営しても、近隣圃場から保毒虫が侵入する可能性が高い。しかし、媒介虫の移動分散能が低いことから、大面積の圃場を設営し、殺虫剤を施用することで圃場に侵入した媒介虫の再移動および繁殖を抑制すると、圃場の内部は保毒虫の侵入リスクが低下し、健全種茎を大量生産できる可能性がある。
  2. 本研究成果は、日本において本病が発生した際の防除対策立案にも利用できる。
  3. 媒介虫は餌植物がない容器から放飼されているため、最低でも1度は移動する必要がある。そのため、移動距離の推定値は野外の実態と比較して過大評価になっている可能性がある。
図表1 237442-1.jpg
図表2 237442-2.jpg
図表3 237442-3.jpg
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2015_b11
カテゴリ 病害虫 栽培技術 さとうきび 繁殖性改善 防除

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