タイトル | ここまでやれる多雪地域の再造林の低コスト化 |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
駒木 貴彰 八木橋 勉 野口 麻穂子 八木 貴信 天野 智将 鹿又 秀聡 櫃間 岳 玉城 聡 織部 雄一朗 新井 隆介 成松 眞樹 長岐 昭彦 中村 人史 渡部 公一 外舘 聖八朗 松本 和馬 |
発行年度 | 2016 |
要約 | 多雪地域において、コンテナ苗を利用した伐採から地拵え、植栽までの一貫作業、各々の作業の省力化等により、地拵えから下刈りまでの初期育林コストを 50%程度削減できることを実証しました。 |
背景・ねらい | 東北地域の人工林伐採後の再造林率は 20 ~ 30%と低く、再造林率向上には初期造林コストの低減が不可欠です。そこで、多雪地型の一貫作業の導入や、下刈りコストの削減による初期造林コストの半減を目的に研究を行いました。その結果、伐採作業用の機械を地拵え作業に利用するとコストは通常作業の 60%以下、植栽作業は 70%程度に削減できることが分かりました。また、下刈りについては、スギとカラマツともに作業回数を従来の二分の一から三分の一に削減できることを明らかにしました。さらに、造林作業のコストを評価するコストシミュレーターを開発し、様々な作業を組み合わせたときのコスト評価をできるようにしました。 |
成果の内容・特徴 | じごしら 地拵えと植栽の省力化は実現できる 地拵えのやり方によって、その後の植栽作業の効率も大きく変わってきます。そこで、伐採作業に使用した機械(グラップル)で地拵えを行い、その後にスギとカラマツのコンテナ苗を通常植栽本数密度の 60 ~ 85%の低密度で植栽しました。その結果、植栽樹種や土地の傾斜によって違いはあるものの、以前から行われている地拵えや植栽作業と比較して、人工数で 30 ~ 45%、経費で40 ~ 60%まで削減できました(図 1)。ただし、機械の1日の使用コストが人力作業の3倍程度になるため、機械作業は2日以内に抑えた方がいいことが分かりました。 下刈り作業は削減できる 下刈り作業は、植栽から下刈り終了時までの初期造林コストの 40%程度を占めるため、スギとカラマツについて、下刈り作業削減の試験を実施しました。その結果、スギはツル植物やササ生地以外では植栽後2年目、3年目、5年目の3回(図 2)、カラマツは同じく1年目と2年目の2回で下刈り作業を終了できる可能性が示されました。これにより、下刈り回数は従来の作業回数の二分の一から三分の一に大幅に削減でき、さらに苗高60cm 以上の大苗を利用すれば、下刈り回数を1回に削減できる可能性も示されました。また、ワラビを植栽することで造林地の下層植生を抑制するカバークロップ効果が期待できることも明らかになりました。 多雪地型一貫作業システムによってトータルコストを削減できる 九州地域での先行研究から、伐採と植栽を連続的に実施する一貫作業に、植栽時期の幅が広いコンテナ苗を組み合わせることで、造林コストを削減できることが明らかになっています。東北地域でも、コンテナ苗の成長と活着率が裸苗と同等かそれ以上の成績であることが分かっています。しかし、九州地域と違って冬季間に積雪がある東北地域では、積雪期を挟んで伐採と植栽が連続しないことも考えられます。そこで、多雪地型一貫作業システムを考案しました(図 3)。このシステムによって、積雪前までに伐採後の地拵えを終了していれば、積雪による作業休止期間があっても融雪後すぐに植栽することで、連続的な一貫作業と工程上は大きな違いがないことを明らかにしました。また、伐採後に地拵えが行われているため、春植えの場合は植栽当年の下刈りが省略できます。さらに、造林コストシミュレーターを開発し、様々な造林作業を組み合わせた作業システムのコスト評価ができるようにしました。 本研究は、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「多雪地域の森林資源持続に向けた低コスト再造林システムの構築」による成果です。 なお、本研究成果を取りまとめた研究成果集は、森林総合研究所のウェブサイトからダウンロードできます。 https://www.ffpri.affrc.go.jp/thk/research/publication/ffpri/result_of_the_third_stage_medium_term_plan/documents/3rd-chuukiseika33.pdf |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p6-7.pdf |
カテゴリ | コスト 省力化 低コスト わらび |