タイトル | 重さを測らず、音で木材の密度と強度を知る |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
久保島 吉貴 園田 里見 加藤 英雄 |
発行年度 | 2016 |
要約 | 木材の強度的性質を測定するには必ず重さを測定しなければなりませんでしたが、重さを測らず強度的性質を調べる画期的な方法を開発しました。打撃音を利用するこの方法は非常に簡便で迅速な測定技術の開発につながります。 |
背景・ねらい | 木材強度の指標として、密度とヤング率※を測定するには重さの測定が不可欠でした。しかし、桟積(さんづ)みした材や木製ガードレール用横棒(図 1)などでは、個々の木材を取り出して重さを測定するために相当の労力を要していました。もし、木材の重さを測定せずに重さを知る方法があれば、この面倒な作業から解放されることになります。私たちは、木材におもりを付けた場合と付けない場合の打撃音の違いを利用して、木材の重さが分からなくても密度とヤング率が分かる測定方法を開発しました。この方法は、桟積みしたままの状態や木製ガードレールの横棒が支柱に取り付けられたままでも、密度とヤング率を知ることができる測定技術の開発につながることが期待されます。 ※ヤング率 材料に負荷を与えた時の変形のしにくさ。材料の強度と統計的な相関関係を有しています。 |
成果の内容・特徴 | 重さを測らず、木材の密度とヤング率を求めるための振動試験 まず、木材におもりを付けた状態と付けない状態で打撃したときの音の高さを測定します。この音の高さの比を、おもりの位置と重さが打撃音に与える影響を表す理論式に代入します。すると、木材の重さに対するおもりの重さの比が求められます。従って、あらかじめおもりの重さを測定しておけば木材の重さが計算できます。また、木材の重さと寸法から密度が計算できます。ヤング率は、木材の寸法、密度そしておもりを付けずに打撃したときの音の高さから計算できます。この一連の作業の中で、木材の重さは一度も測定していません。この測定方法を「質量付加振動法」と名付けることにしました。 質量付加振動法が正しいかを実験で確かめる 質量付加振動法が正しいかどうか、断面が幅 30mm、厚さ 5mm の長方形で長さが 300mm の節などの欠点がない小さい木材の実験で確かめました。実験では、木材を図 2 のようにスポンジの上に載せ、片方の端をハンマーで軽く叩いて発生した音をもう片方の端に置いたマイクロフォンで集音し、音の高さを測定しました。木材におもりを付けた場合(ホチキス針を木材に打ち込みます)と付けない場合とで音の高さを測定しました。おもりは木材の端に付けて調べました。 その結果、表 1 のように、質量付加振動法で求めた密度と通常の方法すなわち木材の重さと体積から求めた密度を比べるとほとんど変わりませんでした。ヤング率は密度と比例する量で、質量付加振動法で求めた値と通常の計算方法で求めた値を比べると密度と同様にほとんど変わりませんでした。これにより質量付加振動法の理論が正しいことが実験で確認できました。 実用化に向けて 質量付加振動法を実用化するにあたり、おもりの重さや付け方の検討、桟積みモデルにおける桟木(さんぎ)の位置、そして実大材での検討を行っています。現在、桟木は木材を打撃した際に振動が発生しない位置に置くのがよさそうであるとか、おもりは重すぎず軽すぎない適切な重さがありそうだということなどが分かってきました。将来的には図 3 のような簡単な装置で測定作業が行えるような技術開発をめざします。 本研究は、JSPS 科研費(JP15K07522)「重量測定を行わずに木材の密度とヤング率を求めるための振動試験方法の開発」による成果です。 詳しくは、Kubojima, Y., Sonoda, S. (2015) European Journal of Wood and Wood Products 73:399-401 および Kubojima et al. (2016) BioResources 11:800-810 をご覧下さい。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p20-21.pdf |
カテゴリ | 測定技術 |