地域産業を創出する現場設置型のリグニン製造システム

タイトル 地域産業を創出する現場設置型のリグニン製造システム
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 山田 竜彦
髙田 依里
髙橋 史帆
ネー ティティ
池田 努
発行年度 2016
要約 地域にリグニン製造ステーションを創設することで、地方創生に貢献する新産業の創出を目指し、その核となる世界初の農山村での現場設置型のリグニン製造システムを開発しました。
背景・ねらい リグニンは細胞壁の主成分の一つで、植物系バイオマスの約20~35%を占めます。国内の林地残材においてもその約30%はリグニンですが、十分な利活用はなされていません。私たちは、地域のリグニン資源を有効利用する技術を開発することで、新たな産業創出と地方創生への貢献をめざす取り組みを行っています。地域にリグニン製造ステーションを創設するため、改質リグニン製造に特化した世界初のシステムを開発しました。圧力リアクターを使用しないという特色を持つこのシステムを農山村現場に展開することで、様々なビジネス展開可能な化成品の原料が、国内の農山村から供給可能となります。
成果の内容・特徴 国産リグニン資源による新産業創出
リグニンは化学構造や物理特性の多様性が災いし、工業材料としての本格的な利用が困難な「未開の原料」とされてきました。私たちは、リグニンの短所とされた多様性を逆手にとって、多様なリグニンの全てを対象とするのではなく、スギリグニンのみをターゲットとすることにより、国産資源の利活用に特化できるという発想の転換を図りました。国土の約7割を森林が占める我が国において、最大量のバイオマスはスギとなっています。スギは我が国のみに特異的に植林された固有の樹木で、当たり前ですが、スギのリグニンはスギからしか取得することはできません。従って、国産スギリグニンに特化した私たちの技術は、必然的に国産資源の利活用をもたらし、これを利用した産業創出は、地方創生に直接貢献します。また、スギのリグニンは、他の樹種のリグニンと比較して優れた特性を示しました。私たちは、スギ材からリグニンを加工しやすい性質を持つ工業材料の形に改質しながら分離する、世界初の現場設置型プラントシ ステムを開発しました(図1)。本システムは、環境負荷が少なく安全性の高いコンパクトなシステムです。

安全に配慮した世界初の現場設置型システム
このプラントシステムは、化学プラントでありながら圧力容器や揮発性有機溶剤を用いない、安全性に配慮したコンセプトで設計されています。メインの反応には安全性の高いポリエチレングリコール(PEG)等のグリコール系薬剤を使用し、揮発性の有機溶剤等は使用しません。PEGは沸点の高い薬剤なので、リグニンの効率的な抽出に必要な140℃程度への加熱を大気圧下で行うことができます。加えて、PEGはリグニンに結合しながら分解を促すので、リグニンの改質と抽出を同時に行えます(図2)。
抽出されたリグニン溶液は、酸性にするだけで溶けない粒子として沈殿します。その沈殿物を集めたものが「改質リグニン」とよばれる工業材料です。また、沈殿したリグニンを除去した水溶液から濃縮器で水分を除去することで未反応のPEGがリサイクルされ、これを再び反応薬剤として利用することができます。さらに、システムに必要なすべての熱源は、地域の現場における木質ボイラーからの蒸気でまかなうことができます。

改質リグニンから製造される高付加価値製品
PEGをリグニンに導入することにより、リグニンの性質は劇的に向上し、改質リグニンとなります。改質リグニンは、熱可塑性が高いなど加工性に優れ、様々な材料への利用が可能です。その製品マーケットは合わせると1000億円を超えると見込まれており、今後は産業化へ向けた開発を進めていきます。

本研究は、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)次世代農林水産業の「地域のリグニン資源が先導するバイオマス利用システムの技術革新(SIPリグニン)」による成果です。


ポリエチレングリコール(PEG)
エチレングリコールが重合した構造をもつ高分子化合物。無毒とされる安全性の高い薬剤で、化粧品等、様々な製品に用いられる。

熱可塑性
加熱すると柔らかく成型しやすくなり、冷やすと再び固くなる特性で、プラスチック加工に有利な性質。
図表1 237466-1.jpg
図表2 237466-2.jpg
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p28-29.pdf
カテゴリ 加工 高付加価値 製造システム 薬剤

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