ヤナギの葉に含まれる物質により木材・プラスチック複合材の耐久性を向上

タイトル ヤナギの葉に含まれる物質により木材・プラスチック複合材の耐久性を向上
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 久保 智史
橋田 光
小林 正彦
発行年度 2016
要約 早生のエネルギー作物であるオノエヤナギの葉がプラスチックの抗酸化材料となることを明らかにしました。オノエヤナギの葉を原料とすることで、木材- プラスチック複合材料の軽量化も可能であることが分かりました。
背景・ねらい オノエヤナギは、ヤナギ科植物の中でも分布域が広く成長が早いことから、その幹・枝を燃料として利用できる木質系エネルギー作物として注目されています。本研究では、植林地に残され、資源としては未利用のオノエヤナギの葉の化学成分に着目した利用研究を行いました。オノエヤナギの葉をポリプロピレンなどの汎用プラスチックと混合することで、プラスチックの酸化分解を強く抑制することができました。また、オノエヤナギの葉を使用することで、従来の原料に比べて、より軽量の木材 - プラスチック複合材料を製造することができました。これらの成果から、オノエヤナギの葉を原料として用いることによって、軽量で耐久性に優れた混練型WPCの製造が可能となると考えています。

混練型WPC
木粉とPPなどの熱可塑性プラスチックをプラスチックの溶融温度以上で練ることで混合し、プレス成形法、押し出し成形法、射出成形法などで任意の形状に成形した材料です。
成果の内容・特徴 ヤナギの「葉」が持つ化学的特徴
ヤナギは成長の早いエネルギー作物として世界中、特に北欧、北米で多く植林されており、日本でも北海道を中心に実証的な植林事業が展開されています。ヤナギをエネルギー作物として利用する場合、幹・枝を燃料として利用し、燃料利用されないヤナギの葉は収穫されずに林地に残されます。
一般的なヤナギの葉には、フラボノイドあるいは芳香族化合物が糖成分と化学結合した化合物が多く含まれています。我が国で植林が試みられているオノエヤナギの葉にも、抗酸化力に優れたアンペロプシンというフラボノイド(図1)が重量換算で10%以上も含まれるタイプがあります。このことから、高含量のアンペロプシンを含むオノエヤナギの葉そのものにも高い抗酸化力があることが期待できます。

プラスチックの抗酸化剤としての特性
我々の身近にあるプラスチック製品の多くは、屋外で使用されると太陽光や温度によって引き起こされる酸化反応のために劣化が促進し、強度低下が起こります。特に、我が国で最も多く利用されているプラスチックの一つであるポリプロピレン(PP)は、酸化によって劣化しやすいプラスチックとして知られています。そこで、PPや更に酸化されやすいプラスチックであるポリエチレンオキシド(PEO)に対するオノエヤナギの葉の抗酸化特性を調べました。図2にオノエヤナギの葉とプラスチックとの混合物の酸化分解性を調べた結果を示します。オノエヤナギの葉を混合しない条件では、両プラスチックともに酸化分解による重さの減少が30分以内で起こっています。しかし、10%のオノエヤナギの葉を混合することで、PPおよびPEOの酸化による分解が始まる時間を、それぞれ1.5時間および43時間まで延長することができました。このことから、オノエヤナギの葉がプラスチックに対して高い抗酸化能力を付与することが分かりました。

オノエヤナギの「葉」を原料とした WPC
木材-プラスチック複合材料(WoodPlasticComposites:混練型WPC)は、木粉とPPなどの熱可塑性プラスチックを加熱混練し、成形して製造される新しい木質系材料です。WPCにはプラスチック材料と同様に抗酸化剤が混合されていますが、高価であるため、現在、より安価な添加剤の開発が課題の一つになっています。そこで、抗酸化力を持つオノエヤナギ葉のPPに対する混合割合を50%に増加させたWPCを試作しました。プレス成形で試作したオノエヤナギの葉を原料としたWPCは、スギ木粉を原料とした一般的なWPCに比べて褐色を帯びていますが、成形性に大きな違いはありませんでした(図3)。スギ木粉とPPを等量混合したWPCの比重は1.06g/cm3でしたが、オノエヤナギ葉とPPを同じ割合で混合したWPCの比重は0.77g/cm3でした。電子顕微鏡観察の結果、このWPCの低比重化は、内部の空隙構造によるものであることが分かりました。これは、発泡剤等を用いることなくWPC内部に空隙構造ができることを示しており、WPCの軽量化に寄与できると考えています。その一方、オノエヤナギの葉のPPに対する混合性は、スギ木粉に比べて劣ることが明らかになりました。オノエヤナギの葉のWPC用抗酸化剤としての性能は、加熱混練条件の最適化等によってWPC中でより均一に分散させることでさらに高められると考えています。

本研究は、公益財団法人 LIXIL 住生活財団調査研究助成、「未利用バイオマスである “ 葉 ” を利用したウッドプラスチックの長期耐久性能向上技術の開発」による成果です。

熱可塑性
加熱すると柔らかく成型しやすくなり、冷やすと再び固くなる特性で、プラスチック加工に有利な性質。
図表1 237469-1.jpg
図表2 237469-2.jpg
図表3 237469-3.jpg
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p34-35.pdf
カテゴリ 加工

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