枯死木の分解を高精度に予測する新たなモデル

タイトル 枯死木の分解を高精度に予測する新たなモデル
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 酒井 佳美
石塚 成宏
発行年度 2016
要約 枯死木が腐朽して分解していく速度は、周辺環境や枯死木の初期条件の影響で大きな違いがあります。そこで、環境要因を反映したモデルを新たに作成した結果、精度よく分解速度を予測することが可能になりました。
背景・ねらい 日本の森林では、枯死木に蓄積されている炭素量は1平方メートル当たり平均0.42kgであり、重要な炭素貯留プールとなっています。枯死木の炭素蓄積量の変化を予測するには、分解による重量減少を推定することが必要です。私たちは、スギとヒノキの枯死木を日本各地から収集し、その重量が時間経過とともにどの程度減少するのかを調べました。重量減少は、各地点の環境や枯死木の初期条件によって大きくばらつきましたが、環境要因を反映させて枯死木の重量減少を示すモデルを作成したところ、従来のモデルより精度良く枯死木の分解速度を予測できるようになりました。
成果の内容・特徴 枯死木は炭素の貯蔵庫
日本では、枯死木(立枯木、倒木、根株)による炭素蓄積量は1平方メートル当たり平均0.42kg あります(Ugawa et al., 2012)。これは、落葉や落枝からなるリターとほぼ同等で、土壌の約15分の1に相当します。枯死木は落葉や落枝に比べて大きく、分解して無くなってしまうまでの時間は数十年以上を要することもあります。そのため枯死木は長期間炭素を保持する「炭素の貯蔵庫」と捉えられています(図1)。

枯死木の分解速度を予測する
枯死木の分解速度がわかると、その炭素動態(分解による炭素放出量と炭素蓄積量の変化)を予測することができます。しかし、枯死木の分解を継続的に測定するには数十年もかかってしまいます。そこで、私たちは間伐や除伐の際に林床に放置された材を「枯死木」とみなして日本各地からサンプルを集め、伐倒後放置された年数をもとに、その分解速度の推定を試みました。分解程度をあらわす数値には材密度 (g/cm3) を使用しました。集めたサンプルの材密度は、伐倒後の経過年数とともに低下する傾向を示しましたが、ばらつきも大きいことがわかりました(図2)。
その理由として、枯死木分解に関わる木材腐朽菌類や食材性昆虫の成育等に影響する環境条件と、材の直径や樹齢、耐朽性といった初期条件の両方が調査地点によってばらついたためと考えられました。

環境要因を加味した枯死木の重量減少推定モデル
そこで、伐倒後の経過年数に加えて、気象要因や直径など、枯死木の分解に影響がある要因を使って重量減少を推定することが可能な、一般化線形混合モデル(Generalized linear mixed model, GLMM) を用いてモデルを作成しました。このモデルによって、スギとヒノキの枯死木が林床に放置されてから 20年間の重量減少を推定することが可能になりました(図3)。このモデルは、場所が変わっても環境要因を反映することができるため、広域での利用が可能です。本モデルでは、一般的な一次指数関数によるモデルに比べて、推定精度が向上しました。これにより、日本のスギとヒノキ人工林での枯死木の炭素動態をより正確に予測することを可能にしました。

詳細は、Sakai, Y., Ishizuka, S. & Takenaka, C. (2013)Predicting deadwood densities of ryptomeria japonica and Chamaecyparis obtusa forests using a generalized linear mixed model with a nationalscale dataset. Forest Ecology and Management 295,228-238. をご覧ください。

一般化線形混合モデル
観測された数値のほか、個体差や場所差などの数値以外の効果を反映されることができる拡張モデル。
図表1 237471-1.jpg
図表2 237471-2.jpg
図表3 237471-3.jpg
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p38-39.pdf
カテゴリ ICT ばら 木材腐朽菌

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