冬季仙台湾におけるブルーム発生メカニズムの解明

タイトル 冬季仙台湾におけるブルーム発生メカニズムの解明
担当機関 (国)水産総合研究センター 東北区水産研究所
研究期間 2011~2011
研究担当者 筧 茂穂
伊藤進一
桑田晃
齊藤宏明
田所和明
発行年度 2015
要約 冬季仙台湾において岸に沿って観測された高濃度クロロフィルa分布の形成メカニズムを観測データ解析および鉛直一次元モデルにより明らかにした、海底まで十分に光が届く浅海域では、植物プランクトンが鉛直混合されながら効率よく光合成を行うため、Chl-a濃度が高くなることが明らかになった。この高濃度Chl-a分布は外海水の進入による栄養塩の供給をトリガーとし、進入後約1ヶ月で形成されていた。
背景・ねらい 震災対応調査で行われた冬季の仙台湾観測において、岸に沿って5 mg m-3を超える高濃度のクロロフィルa(Chl-a)分布が形成されていることが明らかとなった(図1c)。衛星海色画像から、冬季仙台湾では頻繁に同様のChl-a分布が形成されていることが確認された(図2)。一般的には、植物プランクトンの大増殖は成層が形成されて光環境のよい表層付近に植物プランクトンがとどまることにより開始されるが、この観測では成層は見られず、水温・塩分・Chl-a濃度・栄養塩濃度は鉛直一様となっていた。水温・塩分は沖に向かう方向にも一様であったが、Chl-a濃度は岸よりで高く、逆に栄養塩濃度は岸寄りで低くなっていた(図1)。このような分布が形成されるメカニズムについて明らかになっていないことから、本研究では観測データ解析を行うとともに、観測事実に基づいた鉛直一次元低次生態系モデルの構築を行うことにより、メカニズムの解明を行った。
成果の内容・特徴 2012年1月6~10日に第七開洋丸(用船)により阿武隈川河口に設けたCラインで行われた観測結果を解析した(図3)。 Chl-a濃度(栄養塩)濃度は浅海域ほど高(低)く、これらの間にはRedfield比に従った有意な相関があった。このことから空間的に一様なChl-aと栄養塩濃度分布のから光合成・呼吸により観測されたChl-aと栄養塩の関係=分布が形成されたと考えられた。これを確かめるために、観測結果から求めたパラメータを用いた鉛直一次元モデルを構築しChl-aの初期値、光条件、海深を可変パラメータとして約3万のケーススタディを行った。観測されたChl-a分布をよく再現するパラメータの値を求めところ、低Chl-aかつ高栄養塩濃度環境を初期値として約25日で高Chl-a分布が形成されていることが明らかとなった(図4)。Chl-a濃度の岸沖方向の分布の時間変化から、Chl-a濃度が変化しない「臨界海深」が存在し、これよりも浅海域では海底まで光が届き、植物プランクトンが鉛直混合されながら効率よく光合成を行っていた。この観測の1ヶ月前に行われた若鷹丸の調査結果との比較から、外海水の進入により供給された栄養塩をソースとしてこの高濃度Chl-a分布が形成されていることが明らかとなった。
成果の活用面・留意点 河川水による栄養塩供給が主たるソースであると考えられがちな沿岸域において、外海水の影響が強く及ぶことを明確にし、沿岸-外洋相互作用研究の重要性を示した.
図表1 237500-1.jpg
図表2 237500-2.jpg
図表3 237500-3.jpg
図表4 237500-4.jpg
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5149&YEAR=2015
カテゴリ 光条件

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