イスズミ類の生態を利用した効率的漁獲方法

タイトル イスズミ類の生態を利用した効率的漁獲方法
担当機関 宮崎県水産試験場
研究期間 2012~2014
研究担当者 福田紘士
発行年度 2015
要約 ノトイスズミは冬季に県内の調査対象2地区の消波堤に群れを成す年があることが確認された。刺網による漁獲について、9月以降浅場の瀬で行い、冬季に消波堤で群れが形成される場合はその群れを対象に、形成されない場合は、引き続き春季まで行うことが効率的であると考えられた。刺網で漁獲したイスズミ類の胃内容物は、ノトイスズミは褐藻、イスズミは緑藻、テンジクイサキは紅藻の割合が高かった。
背景・ねらい 本県沿岸において藻類に対する植食性魚類の過剰な採食は、磯焼けの進行または継続の主な要因の1つとなっており、漁獲による除去で、その海域の生息密度を低下させることが、現時点での主要な対策と考えられる。ここでは、植食性魚類のうち、イスズミ類を対象として、効率的漁獲方法の検討を行った。
成果の内容・特徴 平成24年度8~2月に日向市平岩港、25年度4、5、7、8、10~1月に串間市都井漁港立宇津地区及び日向市平岩港の消波堤にて、潜水による群れの目視確認を行った結果、12、1月に全長40cm以上のノトイスズミ成魚が串間市都井漁港立宇津地区で300尾程度(平成25年度)、日向市平岩港で100尾程度(平成24、25年度)群れとして確認された(図1)。なお、平成26年度の12、1月には両地区の消波堤とも群れは確認されなかった。

平成26年度に、日向市平岩地区では6~1月に合計7回、串間市東地区では8月~2月に合計8回の刺網による漁獲試験を実施した結果、6~8月ではイスズミ類の漁獲がなく(6回、合計25反)、9月(3回、合計15反)は24尾、1月(4回、合計18反)は10尾、2月(2回、合計20反)は27尾のイスズミ類の漁獲があり、水深-3m以浅の浅場の瀬での漁獲が多かった(図2、3)。

これらのことから、刺網によるイスズミ類の漁獲については、9月以降浅場の瀬で行い、冬季に消波堤で群れが形成される場合はその群れを対象に、形成されない場合は、引き続き春季まで行うことが効率的であると考えられた。

平成26年度に刺網で漁獲したイスズミ類の胃内容物組成(図4)については、ノトイスズミは褐藻類が90%、イスズミは緑藻類が57%、テンジクイサキは紅藻類が76%と高く、褐藻類を主とする藻場を形成する大型海藻に与える影響はノトイスズミが大きいことが示唆された。また、それぞれの種で藻類に対する採食圧が異なることが示唆されたことから、本県においてはテンジクイサキ等、ノトイスズミ以外のイスズミ類の影響も考慮する必要がある。
成果の活用面・留意点 イスズミ類の効率的漁獲を行うことで、より効果的な藻場造成活動が期待される。ただし、場所や年度により傾向が異なると考えられるため、留意が必要である。また、胃内容物から食害状況についての定量的評価の可能性が示された。ただし、胃内容物重量については漁獲時の吐き出し等による過小評価の可能性に留意する必要がある。
図表1 237504-1.jpg
図表2 237504-2.jpg
図表3 237504-3.jpg
図表4 237504-4.jpg
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5090&YEAR=2015
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