タイトル |
北太平洋へ放射性セシウムはどのように拡がったか |
担当機関 |
(国)水産総合研究センター 中央水産研究所 |
研究期間 |
2011 |
研究担当者 |
帰山秀樹
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発行年度 |
2015 |
要約 |
東京電力福島第一原子力発電所事故以降における放射性セシウムの広域拡散状況を把握した。表層海水においては黒潮続流より北側の海域において東方へ速やかに拡散したのに対し、亜表層では亜熱帯モード水に取り込まれた放射性セシウムが日本の南方海域においても確認された。
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背景・ねらい |
東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故により、放出された放射性セシウム (134Csおよび137Cs) の大部分は北太平洋へと降下、沈着および直接流入し、事故直後に水産物の放射能汚染が深刻化した。事故直後、放射性Csは海水の希釈・混合により北太平洋の広域に拡がると予測されたものの、どの程度の濃度レベルで、どのように拡がっていくかは不明であった。これら北太平洋広域における海水の放射性Cs分布状況は、高度回遊魚をはじめとする広域分布魚類への放射能汚染の影響を評価する上で基礎となる情報である。本研究では、調査船観測等により、北太平洋広域における放射性Csの拡散状況を把握した(図1)。
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成果の内容・特徴 |
2011年4月から継続的に、西部北太平洋における海水中の放射性セシウム濃度を測定し、表層海流、水温、塩分などの水塊指標パラメータとの関連を解析し、事故以降の経時的な放射性Csの拡散状況を把握した。事故直後は表層における海水中の放射性Cs濃度は黒潮続流の北側で10から100 mBq/L程度の濃度で分布しており、事故後約半年で北太平洋の中央部まで東へと拡散した(図2)。一方で、黒潮続流の南側では、表層ではなく、亜表層に放射性Cs濃度のピークが確認され、ポテンシャル密度等の情報から「亜熱帯モード水」に放射性Csが取り込まれ、海洋内部へと輸送されていることが明らかとなった(図3)。モード水に取り込まれた放射性Csは表層とは逆向きの西方へと輸送されるため、日本南方の海域においてもその存在が確認された。
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成果の活用面・留意点 |
北太平洋広域における水産物対象生物の放射性セシウムの汚染状況、特に時系列変動を解釈する基礎データとして活用されている。また、海洋モデルによる福島第一原発事故由来の放射性Cs拡散予測モデルの検証データとしても活用されている。本成果は今後の海洋放射能モニタリング体制構築の基盤となることが期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5230&YEAR=2015
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カテゴリ |
亜熱帯
モニタリング
輸送
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