タイトル | 日本近海に来遊するカツオの熱帯域資源との関係性についての研究展開 |
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担当機関 | (国)水産総合研究センター 国際水産資源研究所 |
研究期間 | 2011~2014 |
研究担当者 |
芦田拡士 清藤秀理 佐藤圭介 松本隆之 |
発行年度 | 2015 |
要約 | 初期成長速度の海域間差を指標とし、日本近海で漁獲の主対象となる個体群 (主群) の成長履歴を調べることで、主群が熱帯・亜熱帯の両海域から来遊していることを明らかにした。亜熱帯~日本近海における産卵生態を解明し、熱帯域と比較することで、「主群が孵化する時期の産卵場の北限は北緯25度付近」及び「日本近海での産卵の規模は熱帯域より小さい」ことを明らかにした。 |
背景・ねらい | 中西部太平洋のカツオは、2014年に実施された資源評価において「過剰漁獲でも乱獲状態でもない」とされているが、日本近海では沿岸域を中心に漁獲不振に陥っており、「赤道域での高い漁獲が資源の分布水域を縮小させている」との懸念も示されている。これらの背景より、日本近海へ来遊するカツオの来遊元を明らかにすることが求められている。本研究では「初期成長における海域間差を指標とした孵化海域の推定」及び「亜熱帯域および日本近海におけるカツオの産卵実態把握」を通じ、その実態解明を図った。 |
成果の内容・特徴 | ・日本近海で漁獲の主対象となる個体群 (主群) が孵化する時期と想定される2~3月に、熱帯域 (南緯5度~北緯4度) と亜熱帯域 (北緯15~21度) において稚魚 (10~20日齢) を採集し、それらの成長履歴を比較することにより、両群間で初期成長速度が異なることを明らかにした。この海域間の差異を指標 (12日齢時の耳石半径を指標) として主群の初期成長を調べることで、主群は熱帯域および亜熱帯域の両海域に由来する可能性を明らかにした (図1)。 ・卵巣の成熟状態から、カツオの産卵場は1~5月は北緯25度付近が北限であるものの、水温の季節推移に伴って北上拡大し、6~8月には常磐・三陸沖において産卵することが明らかになった(図2)。産卵期・1回あたりの産卵数などの海域間比較より、日本近海の産卵は熱帯域に比べ規模が小さいことが示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | ・熱帯域、亜熱帯域におけるカツオ幼稚魚の分布調査および標識放流調査と並行した研究展開により、「日本近海来遊群における産卵~漁業への加入様式の把握」「熱帯~日本近海におけるカツオの資源構造とその関係性」についての研究展開に寄与できる。 ・今後、耳石中の微量元素や安定同位体比の分析等により本結果の検証を行なうと共に、主群における孵化海域ごとの寄与率を把握する必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5079&YEAR=2015 |
カテゴリ | 亜熱帯 |