タイトル |
アコヤガイ外套膜から分離した外面上皮細胞の移植による真珠形成法の開発 |
担当機関 |
(国)水産総合研究センター 増養殖研究所 |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
淡路雅彦
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発行年度 |
2015 |
要約 |
アコヤガイ外套膜から貝殻を作る外面上皮細胞を分離し、その細胞を真珠核に掘った小穴に入れて母貝に移植する方法により、真珠核表面に高率で真珠層が形成された。また貝殻真珠層黄色度で選抜育種された黄色系および白色系アコヤガイの外面上皮細胞を様々な比率で混合して移植すると、形成される真珠の黄色度が混合比に応じて変化し、表現型の異なる外面上皮細胞が共存して真珠を作ると考えられた。
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背景・ねらい |
アコヤガイをはじめとする真珠貝を用いた真珠養殖では、真珠貝の外套膜の一部を切り出した小組織片(ピース)を、貝殻で作った真珠核とともに同種他個体(母貝)の体内に移植(挿核)して真珠を生産する。移植されるピースの組織のうち真珠形成に重要なのは貝殻形成能を持つ外套膜外面上皮細胞なので、ピースに換えて外面上皮細胞を真珠核と共に母貝に移植しても真珠が形成されると考えられる。もし外面上皮細胞の移植により効率よく真珠が生産できれば、挿核時に母貝体内に生じる組織屑の減少による真珠品質の向上、表現型の異なる外面上皮細胞の混合移植による優良形質の重ね合わせなどが期待できる。しかし真珠形成率の高い外面上皮細胞移植法は未開発である。そこで外面上皮細胞の移植による真珠形成法を開発するとともに、表現型の異なる外面上皮細胞の混合移植を行い形成される真珠の特性を検討した。
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成果の内容・特徴 |
アコヤガイ外套膜から貝殻を作る外面上皮細胞を酵素処理で分離し、その細胞を移植して真珠を形成させる方法を開発した。直径4.5mmの真珠核に直径1mm深さ0.5~1mmの小穴を掘り(図1)、その穴に外面上皮細胞を入れて母貝に移植する方法を用いて1核あたり約5万細胞を移植すると、平均87%の真珠核表面に真珠層が形成された(図2)。また貝殻真珠層黄色度の高低により選抜育種された黄色系および白色系アコヤガイの外面上皮細胞を分離し、それを様々な比率で混合して移植すると、形成される真珠の黄色度が混合比に応じて変化した(図3)。この結果から、混合して移植された表現型の異なる外面上皮細胞は、混合比を維持して母貝体内で共存して真珠袋を形成し真珠を作ると考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
開発された方法は真珠養殖の現場に直ちに導入できるものではないが、将来的にアコヤガイの育種により作出される複数のピース貝系統の優良形質を、細胞レベルで共存させ重ね合わせる方法として利用が期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5195&YEAR=2015
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カテゴリ |
育種
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