タイトル |
北部九州におけるべんがらとモリブデン化合物で種子を被覆した水稲湛水直播 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
原嘉隆
秀島好知
八田聡
岡崎泰裕
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発行年度 |
2015 |
要約 |
北部九州において、べんがらとモリブデン化合物などの混合粉を被覆した水稲種子を湛水土壌中に直播することで、従来法に劣らない十分な苗立ちと収量が得られる。従来法に比べて被覆資材量が少ないため、被覆にかかる費用と手間が軽減される。
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キーワード |
水稲、湛水直播、苗立ち、べんがら、モリブデン
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背景・ねらい |
水稲作において、直播は省力な方法と期待されるが、湛水直播では種子被覆など、苗立ち確保のために費用と手間がかかり、普及があまり進んでいない。また、北部九州の麦後の直播では地温が高く、土壌還元が進行しやすい。そこで、土壌還元で生じる硫化物による苗立ち阻害を軽減するためのモリブデン化合物(三酸化モリブデン)と、種子の流亡を抑制するためのべんがら(酸化鉄)と、接着のためのポリビニルアルコールを混合して種子に被覆するべんがらモリブデン被覆を簡易な被覆法として開発した(2013年度研究成果情報)。そこで、現地水田において本法での苗立ちと収量を従来法の過酸化Ca剤被覆と比較するとともに、普及がみられた農家水田での苗立ちと収量を調査する。
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成果の内容・特徴 |
- べんがらモリブデン被覆では、資材量が種子の0.1倍重と少ないため、被覆が容易である。過酸化Ca剤被覆で用いられてきたコーティングマシーンで被覆でき、過酸化Ca剤では、種子15kgの被覆に20分程かかるのに対し、本法では種子20kgを10分程で被覆できる。汎用的なコンクリートミキサーでは種子30kgを10分程で被覆できる(図1)。
- 被覆資材は種子重の0.1倍重を使用し、種子1kgにつき約70円と安価である(過酸化Ca剤1倍重では約450円、鉄コーティング資材0.5倍重では約250円)。
- 被覆後30分から数時間で表面が乾燥した種子を網袋に集めて播種まで保管できる。常温で1週間ほど、10°C程度の低温で1ヶ月程度、保管できる(図1)。
- 被覆種子は、ショットガン直播機や播種溝が付けられる播種機などを用いて、代かき土壌に深さ5~10mmとなるよう播種する(図1)。
- 点播では播種量を2~3kg/10a程度とする。播種同時に除草剤を散布し、自然落水で出芽させた後、1葉期に2度目の除草剤散布を行う(図1)。
- 現地水田においても、べんがらモリブデン被覆した種子は、過酸化Ca剤で被覆した種子と同等の苗立ちや収量が得られる(表1)。様々な品種で、十分な苗立ちや収量が得られる(表2、表3)。移植と比較して、遜色のない収量が得られる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:水稲生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北部九州で100ha程度普及予定(2015年度に北部九州で15ha以上実施)
- その他:被覆資材(3成分混合、特許実施契約済、非農薬)は10kg当たり7,000円程度(流通経費は別)で販売される予定。雀による食害への抑制効果はないので、雀が多い水田での実施は避ける。スクミリンゴガイによる食害への抑制効果もないので、生息域ではできるだけ前年に大豆を栽培した水田で実施する。モリブデン含量が高い飼料を反芻動物に給与すると過剰症を発症することが知られているが、この方法で直播し収穫された玄米と藁についてモリブデン含量が有意に上昇した結果は得られていない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2015/15_008.html
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カテゴリ |
病害虫
乾燥
除草剤
水田
水稲
スクミリンゴガイ
大豆
農薬
播種
品種
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