タイトル |
面積と生産物の両視点からみた有機・慣行輪作体系の比較LCA |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
林清忠
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発行年度 |
2015 |
要約 |
面積と生産物の両視点を組み入れた評価のフレームワークを作成し、収量と面積当たり環境影響のトレード・オフと生産物当たりの環境影響を同時に考慮することにより、有機輪作体系と慣行輪作体系を比較評価する。
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キーワード |
有機輪作体系、比較LCA、トレード・オフ、温室効果ガス
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背景・ねらい |
持続可能な農業生産を支える取組みとして、有機農業への関心が高まっている。環境負荷を低減した農業生産体系を構築する上で、有機農業の直接・間接の(ライフサイクルでの)環境影響を評価することに加え、トレード・オフ(収量の改善と面積当たり環境負荷の改善が両立しない現象)に対応することが重要である。そこで、従来、生産物のみの視点から実施されていたライフサイクルアセスメント(LCA)に、トレード・オフを考慮するために面積の視点を加え、有機輪作体系と慣行輪作体系のライフサイクル環境影響がどのように評価できるかを示す。
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成果の内容・特徴 |
- 有機・慣行輪作体系を、面積当たりの視点と生産物当たりの視点を同時に考慮することにより比較評価した成果である。前者(面積当たりの視点)は、農業生産場面における収量と面積当たり環境影響のトレード・オフを検討するための視点、後者(生産物当たりの視点)は、従来のLCAの視点であり、農産物販売場面等で商品の環境影響を「見える化」する際の視点でもある(図1)。この両者を考慮したフレームワークにより、有機農業への転換の3つのケースを区別することができる。
- T県における有機および慣行の輪作体系を、このフレームワークにより図2のように評価することができる。収量と面積当たり温室効果ガス(GHG)排出量の関係(図2左側)は、個々の輪作体系についてトレード・オフ(収量の低下とGHG排出量の低減)があることを示している。これは、図1の第2のケースに相当する。また、それぞれの包絡線が交差していることは、有機輪作体系全体と慣行輪作体系全体の関係にもトレード・オフがあることを表している。
- 生産物当たりGHG排出量(図2右側)については、すべての有機輪作体系のGHG排出量が慣行輪作体系に比べ小さくなっていることを示している。
- 地球温暖化以外の影響領域(酸性化、富栄養化、非再生可能エネルギー)についても、面積当たりの評価におけるトレード・オフと生産物当たり環境影響の有機輪作体系での低減という同様の傾向が得られている。
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成果の活用面・留意点 |
- 環境保全型農業に関わる政策担当者、流通・販売業者、生産者、消費者、研究者等の参考になる情報である。
- 農業生産からの直接排出だけでなく、関連する農業投入財(肥料、農薬、農業機械等)の製造および流通過程に関する物量ベースのデータを整備しつつ、ライフサイクルでの環境影響を推計している。
- 環境影響の計算には汎用的LCAソフトウェア(SimaPro)を用いており、評価に用いたデータはインベントリデータベース化して管理している。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/narc15_s27.html
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カテゴリ |
有機農業
有機栽培
肥料
病害虫
再生可能エネルギー
データベース
農薬
輪作体系
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