タイトル |
高軒高ハウスでの長期どり養液栽培に適した生食用トマト品種候補安濃交9号 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 |
研究期間 |
2006~2015 |
研究担当者 |
松永啓
齊藤猛雄
斎藤新
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発行年度 |
2015 |
要約 |
トマト安濃交9号は、高軒高ハウスにおける長期どり養液栽培で、一般的な日本の品種と比べて食味が同等で、良果収量が多い、生食用大玉品種である。
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キーワード |
生食用トマト、高軒高ハウス、養液栽培、長期どり栽培、多収性
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背景・ねらい |
わが国の園芸生産では、生産者の収益増大のため施設栽培における高品質な野菜類の収量性を向上する栽培技術が求められている。トマトにおいては、高軒高ハウスを利用した養液栽培技術の改良が進み、高品質および多収性を目指した栽培が可能となりつつある。しかし、既存の栽培技術だけでは高品質化および多収性の向上ともに頭打ちの状態であり、養液栽培に適した品種の開発が望まれている。海外では養液栽培で多収性を示す品種が開発されているが、これらの品種は日本人の嗜好に適さない。そこで、高軒高ハウスにおける養液栽培に適し、果実糖度が一般的な日本品種と同等に高く、多収性である生食用トマト品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- トマト安濃交9号は、食味、長期どり養液栽培における収量性、果実外観等が優れたTHY113を種子親に、長期どり養液栽培における収量性、果実肥大性、果実外観等が優れたTHY102を花粉親に用いて交配したF1系統である(図1)。THY113およびTHY102はともに、多収性品種の「Geronimo」を種子親に、果実糖度の高い「桃太郎8」を花粉親に用いて交配した後代から選抜した固定系統である。
- トマト安濃交9号は、高軒高ハウスにおける長期どり養液栽培で総収量および良果収量がわが国の長期どり栽培での代表的な品種の「麗容」より多く、オランダの種苗会社で日本の生産者向けに開発された品種の「富丸ムーチョ」と同等、良果1果重は「麗容」より重く「富丸ムーチョ」と同等、果実糖度は「麗容」と同等で、「富丸ムーチョ」より優れる(表1)。
- トマト安濃交9号は、草丈が長く、着果性に優れ、果実外観および果実断面の様相は一般的な日本の品種と同等である(表1、図2)。
- トマト安濃交9号は、萎凋病レース1およびレース2、半身萎凋病、根腐萎凋病およびネコブセンチュウに対する抵抗性およびモザイク病(ToMV)に対する抵抗性遺伝子としてTm-2aを保有している(データ省略)。
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成果の活用面・留意点 |
- トマト安濃交9号は、高軒高ハウスにおける土耕、ポット耕、鉢栽培等にも適する。
- トマト安濃交9号は、草丈が長いので軒の低いハウスにおける栽培には不向きである。
- トマト安濃交9号は、垂直方向にできるだけ長く誘引することが望ましく、斜め誘引等の整枝法には適さない。
- トマト安濃交9号は、高温期には裂果が発生しやすいため、遮光等により温度の上昇を抑えるように栽培管理する。
- トマト安濃交9号は、今後、農研機構と利用許諾契約を締結した民間種苗会社等から種子が販売される予定であるが、販売が開始されるまでの間、農研機構野菜茶業研究所と「原種苗提供契約」を締結のうえ、有償にて種子を提供する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2015/vegetea15_s09.html
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カテゴリ |
栽培技術
施設栽培
多収性
茶
抵抗性
抵抗性遺伝子
トマト
品種
養液栽培
良食味
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