タイトル |
情報伝達システムを有した飼料分解に関わるルーメン細菌が生息する |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
三森眞琴
Ghali Ines
真貝拓三
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発行年度 |
2015 |
要約 |
反すう家畜のルーメンから得られた遺伝子配列を解析すると、細菌の情報伝達システムとして知られるクオラムセンシングに関連するluxS遺伝子がセルロース分解菌や飼料片上のバイオフィルム形成に関係する細菌から検出される。
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キーワード |
反すう家畜、ルーメン細菌、情報伝達、LuxS
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背景・ねらい |
反すう家畜はルーメン微生物による飼料分解作用(ルーメン発酵)により栄養を得ている。したがって、ルーメン微生物による飼料分解の促進は飼料の利用性を高める上で重要である。ルーメン内に生息する多種多様なルーメン細菌は互いに競合または協調しながら飼料を活発に分解していると推定されるが、その仕組みは不明な部分が多い。そこで、ルーメン細菌叢での細菌間の競合・協調に働いていると推定される情報交換システムについて調べることを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- メタゲノムデータを保管しているmetagenomics RASTサーバー(MG-RAST)からプロジェクトID mgp4126、mgp582、mgp24をルーメン微生物メタゲノムのデータセットとして取集する。メタトランスクリプトデータセットは、ウシ(ホルスタイン種)のルーメン内容物から回収したmRNAの配列を解読することにより構築する。
- メタゲノムデータを保管しているmetagenomics RASTサーバー(MG-RAST)からプロジェクトID mgp4126、mgp582、mgp24をルーメン微生物メタゲノムのデータセットとして取集する。メタトランスクリプトデータセットは、ウシ(ホルスタイン種)のルーメン内容物から回収したmRNAの配列を解読することにより構築する。
- メタゲノムデータセットからは以下の4つの門(占有率)に属するluxS遺伝子が回収される:Bacteroidetes(66.8%)、Firmicutes(29.8%)、Fusobacteria(2.6%)、Actinobacteria(0.7%)(表1)。メタトランスクリプトデータセットからは以下の3つの門(占有率)に属するluxS遺伝子が回収される:Bacteroidetes(75.5%)、Firmicutes(15.5%)、Spirochaetes(8.9%)。
- メタゲノムデータセットおよびメタトランスクリプトデータセットから得られたluxS遺伝子から推定されたアミノ酸配列は、LuxSのオートインデューサー2(AI-2)を合成する機能に必要なアミノ酸を含んでいる(図1)。このことから、これらのLuxSはルーメン内でAI-2を合成していると推定される。
- セルロース分解菌や飼料片上のバイオフィルムの構成員が含まれるPrevotella、Ruminococcus、Eubacteriumなどの菌属から多数のluxS遺伝子が見つかることから、AI-2を介したクオラムセンシングシステムがルーメン内のバイオフィルム形成や繊維分解に関与していると推察できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 反すう家畜の飼料分解でクオラムセンシングシステムが働くことを示唆する基礎的な知見として活用できる。
- 本研究は遺伝子配列解析の結果であり、個々の細菌でのクオラムセンシングシステムの働きを詳細に調べる必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/nilgs15_s24.html
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カテゴリ |
くり
センシング
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