養豚場離乳豚に共感染した豚インフルエンザウイルスの遺伝学的性状

タイトル 養豚場離乳豚に共感染した豚インフルエンザウイルスの遺伝学的性状
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 阿部遥
峯淳貴
竹前喜洋
谷川太一朗
常國良太
西藤岳彦
発行年度 2015
要約 養豚場において、1頭の離乳豚への2つの異なる亜型のA型インフルエンザウイルス感染が認められた。感染豚の鼻腔拭い液から16種類の遺伝子再集合ウイルスを分離し、養豚場における遺伝子再集合ウイルスの出現の実態を明らかにした。
キーワード 豚インフルエンザ、サーベイランス、遺伝子解析
背景・ねらい 豚インフルエンザはA型インフルエンザウイルス(IAV)による豚の呼吸器疾病である。豚は、鳥型、哺乳類型両方のIAVに対するレセプターを持ち、感受性を有する。さらに、ヒト、豚、および鳥などのIAVが豚に同時に感染した際、これらのウイルス遺伝子が豚内で混合して、新たな遺伝子の組み合わせのウイルスが産生されることがある(遺伝子再集合)。実際に、2009年のパンデミックH1N1ウイルスは豚IAV(IAV-S)同士の遺伝子再集合体であったことから、IAV-Sを監視しその循環・維持機序を解明することは養豚農家の経済的損失を防ぎ、またパンデミックを防ぐために重要である。本研究では、タイの養豚場で1頭の離乳豚が異なる亜型のIAV-Sに共感染している事を見いだし、感染豚から分離されたIAV-Sを解析することで豚内での新たな遺伝子再集合ウイルスの出現の実態を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 2012年2月、継続的にIAV-Sの監視を行っているタイChachoengsao県の大規模養豚場において、40頭の離乳豚の鼻腔拭い液を用いた遺伝子検査により12頭のIAV感染を確認した。
  2. IAV遺伝子が検出された一頭の離乳豚の鼻腔拭い液から、二種類の赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子が検出されたことから、この豚は二種類のIAVに共感染したと考えられる。
  3. 共感染した豚の鼻腔拭い液から、プラーク法により遺伝子再集合ウイルスを別々に分離することが可能である(表1)。
  4. 分離したIAVの全ゲノム配列の比較により、H1N1および H3N2亜型のウイルス(H1N1-AおよびH3N2-A)が豚に共感染して遺伝子再集合を起こしたこと、共感染により4つの亜型、16種類の遺伝子構成の遺伝子再集合ウイルス(H1N1-A~G、H1N2- A~D、H3N1-A、H3N2-A~D)が産生された事が明らかである(図1)。
  5. 豚検体から分離されたウイルスの培養細胞での増殖を比較したところ、最初に豚に共感染したと考えられる2種のウイルス(H1N1-AおよびH3N2-A)と比較して、それらの遺伝子再集合体であると考えられるウイルス(H1N1-B、H3N2-D)の増殖効率が勝っていたことは、遺伝子再集合がより環境に適したIAVの産生に重要であることを示している(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究成果は、これまで実験的感染で示されてきた共感染による遺伝子再集合が、実際に野外で起こっている現象であることを証明するものである。
  2. 動物体内環境下において、親ウイルスに比べてより増殖に優れたウイルスが出現することは、農場でのウイルス感染の拡大に影響する可能性があり、IAV-S感染による農家の損失増大につながることが懸念される。
図表1 237749-1.gif
図表2 237749-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2015/niah15_s08.html
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