道東の小麦収量に対する高温の影響は地域の日照特性により変化する

タイトル 道東の小麦収量に対する高温の影響は地域の日照特性により変化する
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2013~2015
研究担当者 下田星児
濱嵜孝弘
廣田知良
菅野洋光
西尾善太
発行年度 2015
要約 太平洋高気圧の影響を受ける高温年は、十勝地域で顕著な小麦収量の低下が見られるが、オホーツク地域は高温年でも日照時間が長くなる年が多く、多収になる場合がある。日照時間4.5時間以下の場合に、高温による収量低下が顕著になる。
キーワード 小麦、道東、気象メッシュ、フェーン
背景・ねらい 全国の小麦の4割以上を生産する北海道東部地域において、6月下旬以降の高温は、秋まき小麦の登熟期間を短縮させるため収量を低下させる原因とされる。しかし、東部南側の十勝地域と北側のオホーツク地域では、6月下旬以降の日平均気温の変動傾向は一致するものの、2地域の収量の年変動は異なる。この時期の北海道は、オホーツク海高気圧の強弱により、気温と日照時間のバランスが大きく変動するため、気温だけが小麦収量の変動要因ではない可能性が高い。十勝地域では、オホーツク海高気圧の強い場合に日照時間が長く低温、太平洋高気圧が強い場合に日照時間が短く高温になる点が、オホーツク地域と異なる。そこで、オホーツク地域と十勝地域の小麦収量の気温への応答感度を比較し、収量に影響する気象要因を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 収量に対して有意な相関を示す気象要素は、十勝地域では6月下旬~7月中旬の日平均気温、オホーツク地域では6月下旬~7月中旬の日照時間である(図1)。地域差、年次差はあるが、6月下旬~7月中旬は、小麦の生育ステージの中で子実の充実に関わる登熟期間にあたる。
  2. 市町村ごとの気象要素に対する応答を見ても、収量へ影響する気象要素は、十勝地域とオホーツク地域で明瞭に区分できる(図2)。太平洋高気圧が強く南風が卓越する場合、十勝地域には太平洋から暖かく湿った空気が流入するが、オホーツク地域側では、地域の境目にある大雪山から雌阿寒岳の間で雲が遮られるフェーン現象が起きる。オホーツク地域で気温は上昇しても、日照時間が長くなる(図3)。光合成による同化産物量増加等により収量が増加する可能性が高まる。十勝地域は、風向による日照時間の変化は無く、高温を伴う南風は登熟期間を短縮させるため、より強い減収要因となる。
  3. 6月下旬~7月中旬の日照時間が4.5時間以下の場合に、収量は気温上昇に伴い減少し、気温1℃上昇に対し0.35t/haの減収となる(図4左)。一方、日照時間4.5時間以上の場合は、温度上昇に伴う減収が見られない(図4右)。十勝地域はオホーツク地域に比べ、日照時間が4.5時間未満の年が多く、高温に伴う収量低下が顕著になる。
成果の活用面・留意点
  1. 小麦収量は農林水産省作物統計、気象要素は農業環境技術研究所気象メッシュデータ(清野1993)より畑地目を抽出し、使用した。
  2. 解析対象とした15年間のうち、13年間の主要品種はホクシンである。現行品種とは気象に対する収量の応答が異なる可能性がある。
図表1 237797-1.gif
図表2 237797-2.gif
図表3 237797-3.gif
図表4 237797-4.gif
図表5 237797-5.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2015/harc15_s17.html
カテゴリ 小麦 品種

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