タイトル |
周年親子放牧により子牛生産コストを半減する繁殖経営の生産管理と経営対応 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2013~2015 |
研究担当者 |
千田雅之
|
発行年度 |
2015 |
要約 |
労働時間の7割低減と生産コスト半減を実現する肉用牛繁殖経営の要点は、放牧用地の団地化と定置方式による周年親子放牧、1日2回の集畜と個体管理、高い牧養力を維持する草地管理、コントラクターとの連携による冬期飼料の調達などである。
|
キーワード |
肉用牛、周年放牧、親子放牧、草地管理、コントラクター
|
背景・ねらい |
和牛肉生産の減少が懸念される中で、肉用牛繁殖経営の収益性の飛躍的向上により子牛(肥育素牛)生産の増加を図ることが喫緊の課題となっている。繁殖経営における子牛生産コストの低減に放牧導入は有効とされるが、青壮年の担い手確保につながる高い収益性をあげるには、妊娠確認牛を対象とした季節放牧では限界があり、放牧期間の延長と放牧対象牛の拡大が必要である。そこで、繁殖牛とその子牛を周年で放牧飼養し、高収益を実現する経営体の生産管理と経営対応、経営成果を分析し、高収益繁殖経営の成立に必要な条件等を明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- 事例経営は、茶業の傍ら、約12haの里山で経産牛24頭とその子牛を周年放牧飼養し、子牛生産率の確保と飼養管理の省力化、物財費の低減を図り、高い収益性を確保する。
- 生産管理の要点は、1)大牧区定置方式による放牧、2)1日2回の集畜(管理棟のスタンチョン越しにふすまを親牛に1.5kg/頭/日給与)による健康状態や繁殖にかかわる個体観察、3)親子1組あたり50aの急傾斜の里山で放牧牛を養う草地管理、4)コントラクターからの冬季粗飼料の調達(4か月間、稲WCSを10kg/日/頭給餌)である。子牛は出生後から3か月齢までは毎日2回、スタンチョンにつなぐなど、畜主や施設への馴致を行う。高い牧養力は、雑木を伐採直後、表土を削らず、土壌保持力の強いシバ型草種のバヒアグラスを播種し草地造成するとともに、山頂部に管理棟を設けて放牧牛を集め、草地全体へ家畜糞尿を自然拡散させることなどにより維持する(図1)。
- 牛の捕獲・移動や飼料の採草、排せつ物処理、堆肥運搬散布作業がないため、全国平均と比べて、子牛1頭あたり作業労働時間は約7割少ない38時間である(表)。
- 放牧育成を行うため子牛の増体や市場評価および売上高はやや低いが、飼料・敷料費や種代、施設機械償却費などが少なく、子牛生産コストは全国平均の2分の1以下である。この結果、1頭あたり所得は高く、8時間あたり労働報酬額は全国平均の5倍以上の約27千円と試算され、他産業並みの収益性が確保される(図2)。
- 周年親子放牧により高い収益性を実現するには、親牛10頭以上の放牧飼養可能な5ha以上の放牧用地の団地化、雑木伐採など草地造成の基盤づくり、冬季粗飼料を低コストで生産し供給できる経営体との連携などの地域的支援が必要である。
|
成果の活用面・留意点 |
- 周年親子放牧により高い収益性を実現するには、親牛10頭以上の放牧飼養可能な5ha以上の放牧用地の団地化、雑木伐採など草地造成の基盤づくり、冬季粗飼料を低コストで生産し供給できる経営体との連携などの地域的支援が必要である。
- 放牧に馴れていない外部導入牛では事故などのリスクが高いので、増頭は自家育成牛で行うことが望ましい。自然哺育による子牛の発育を確保するため、泌乳量の少ない親牛へは補助飼料を給与する必要がある。
- 新規に放牧畜産を開始して繁殖牛を自家育成しつつ、500万円程度の高い収益を確保するには8年程度の期間が必要であり、この間の所得確保や資金対応なども必要である。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/warc/2015/warc15_s04.html
|
カテゴリ |
経営管理
コスト
コントラクター
飼育技術
省力化
茶
低コスト
肉牛
播種
繁殖性改善
|