葉表面の気孔の閉じ具合を調整しオゾン耐性を強化する転写因子

タイトル 葉表面の気孔の閉じ具合を調整しオゾン耐性を強化する転写因子
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2015~2016
研究担当者 永利 友佳理
光田 展隆
久保 明弘
佐治 光
林 真妃
井上 晋一郎
木下 俊則
大熊 英治
村田 芳行
瀬尾 光範
高木 優
発行年度 2016
要約 植物の葉緑体の発達を制御する転写因子(GLK1, GLK2)の機能を植物内で抑制すると、大気汚染物質であるオゾンに対する耐性が著しく向上する。GLK1, GLK2転写因子は気孔の開閉に関わる遺伝子の発現に関与し、その機能抑制植物では気孔が閉じ気味になる。
キーワード 大気汚染物質耐性, 気孔, 転写因子, 転写抑制技術
背景・ねらい 地表近くのオゾンは大気汚染物質の一つであり、光化学スモッグの主な成分である。オゾンは、植物の中に取り込まれると、その強い酸化力により植物の組織を傷め、光合成能を低下させるため、農作物の品質や収量に甚大な被害を与える。その被害額は、米国のダイズとトウモロコシだけでも年間90億ドルに達しており、食料生産における深刻な問題である。先進国にとどまらず、開発途上国でも急速な経済発展に伴って大気汚染物質が増加し、オゾン濃度が上昇しており、農作物に及ぼす影響が懸念されている。そこで、農作物などのオゾン耐性を向上させる技術を確立し、不良環境に適応可能な作物を開発することを目指して、オゾンによる葉の障害に関わる転写因子遺伝子の探索を行い、同定した遺伝子がオゾン耐性に関与するメカニズムを明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. シロイヌナズナの転写因子約1,500個について、転写因子の機能を植物内で抑制する転写抑制技術(CRES-T法, Hiratsu K et al. 2003)を適用したシロイヌナズナ形質転換リソース約30,000個体を高濃度のオゾンに暴露し、オゾンに強い植物の選抜およびその原因遺伝子を同定する。
  2. 葉緑体の発達を制御する転写因子(GLK1, GLK2転写因子)の機能を植物体全体で抑制した植物は、高濃度のオゾンに対する耐性が向上する(図1)。この植物は、葉面温度が高く(蒸散量が少ない)、気孔の開度が小さいことから、植物内へのオゾン取込み量が減少し、オゾン耐性が向上したと考えられる(図2)。
  3. GLK1, GLK2転写因子は、気孔が開く際に必要な因子の一つであるカリウムチャネル遺伝子の発現を制御する活性を持つ。
  4. 気孔の開閉を制御する孔辺細胞で特異的に機能する遺伝子のプロモーターを用いてGLK1転写因子の機能を抑制することにより、葉肉細胞の葉緑体には影響せず、植物にオゾン耐性を付与することが出来る。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究により同定したGLK1, GLK2転写因子を用いて適切に気孔の閉じ具合を調節することができれば、大気汚染耐性だけでなく干ばつ耐性などの環境ストレスに強い作物の開発に貢献することが期待できる。
  2. 気孔は大気汚染物質の取込みや、体内の水分損失に関与する一方で、光合成の活性や成長においても重要である。大気汚染物質や干ばつ等のストレスを受けた時の孔辺細胞に限定してGLK1, GLK2転写因子の機能を制御するなど、適切に気孔の閉じ具合を調節する技術の開発も必要である。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2016_b04
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2016_b04
カテゴリ 大豆 とうもろこし

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