阿武隈川河口域におけるセシウムの動態

タイトル 阿武隈川河口域におけるセシウムの動態
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 東北区水産研究所
研究期間 2011~2016
研究担当者 筧 茂穂
帰山秀樹
安倍大介
小埜恒夫
伊藤進一
清水勇吾
渡邊朝生
発行年度 2016
要約 東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所の事故に由来する放射性物質汚染が懸念されていた阿武隈川河口周辺において観測を行い、放射性セシウムのmixing diagramを描くことにより、その挙動を明らかにした。塩分0.1~2.3において脱着により溶存態が増加し、懸濁態が減少していること、塩分26以上で懸濁態が沈降・堆積していること、溶存態・懸濁態ともに海域で希釈されていることなどがわかった。
背景・ねらい 東日本大震災により福島第一原子力発電所の事故が発生し、大量の放射性物質が大気、海洋に放出された。阿武隈川は東北太平洋岸の主要河川の一つであり、その集水域の大部分が福島県の中通りであることから、流域の河川水、堆積物、淡水魚から福島第一原発事故に由来する放射性物質が検出されている。また阿武隈川が流れ込む仙台湾でも海水や動物プランクトンに周辺より高いセシウム137(137Cs)が含まれることが報告され、河口付近の海底からも周辺より高いガンマ線が検出された。河口付近の塩分が急激に変化するところでは、物質が吸着、脱着、溶出等の作用を受けることが知られ、その挙動はmixing diagram(希釈ダイアグラム)を描くことによって明らかにすることができる。本研究では阿武隈川河口周辺において観測を行い、放射性セシウムのmixing diagramを描くことにより、その挙動を明らかにした。
成果の内容・特徴 2013年8月および2014年7月に阿武隈川下流および阿武隈川河口付近の海域で観測を行い(図1)、水および堆積物をサンプリングし、溶存態および懸濁態の放射性セシウム(134Csおよび137Cs)の測定を行った。水については塩分の測定も行った。放射性セシウムの80%以上が、河川では懸濁態、海では溶存態として存在していた。懸濁態137Csは河川水中では20~200mBq L-1であったが、海水中では2 mBq L-1以下に減少していた。mixing diagramから塩分0.1~2.3において脱着により溶存態が増加し、懸濁態が減少していることがわかった(図2)。塩分26以上では懸濁態が沈降・堆積しており、この作用による懸濁物の減少量は保存的混合から見積もられる濃度の80%以上に及んでいた(図3)。この作用により懸濁態137Cs濃度は河川水中よりも海水中で大幅に低くなる。河口から8km以内の海域の堆積物中の137Cs濃度は100~3000Bq kg-1であり、周辺よりも高濃度であった(図4)。この高濃度の137Csを含む堆積物は懸濁態の沈降・堆積により形成されたと考えられる。また、放射性セシウムは溶存態・懸濁態ともに海域で希釈されていることもわかった。
成果の活用面・留意点 阿武隈川河口での放射性セシウムの挙動が明らかになり、海洋生態系への放射性物質の影響はないことが明らかになった。 
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6076&YEAR=2016
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