タイトル | 東日本大震災による南三陸岩礁藻場への影響とその後の変遷 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 東北区水産研究所 |
研究期間 | 2011~2015 |
研究担当者 |
村岡大祐 玉置仁 |
発行年度 | 2016 |
要約 | 震災前から2014年にかけて宮城県牡鹿半島岩礁域のライン調査を行い、震災が褐藻アラメ群落に与えた影響を調べた。震災4ヶ月後、主要な植食動物であるキタムラサキウニの棲息密度は震災前の約1割に激減していた。植食動物の減少(摂食圧の低下)に伴い、アラメ幼体の大量発生が認められた。これら幼体の一部が生残して成体(1歳以上)へと推移し、アラメ群落の深所への拡大が起こっていることを確認した。 |
背景・ねらい | 南三陸沿岸岩礁域にはアラメが群落を形成し、エゾアワビやキタムラサキウニ等の重要な生育場となっている。その一方で、キタムラサキウニ等植食動物の高い摂食圧を背景とした磯焼けの発生が以前から指摘されてきた。2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波が、アラメ群落にどのような影響を与えたかを明らかにすることは、自然災害による沿岸生態系への影響検証のみならず、磯焼けの原因を再確認する上でも重要である。 |
成果の内容・特徴 | 震災前(2008年)から2014年にかけて、100mの固定ラインを岸側から沖側へ設置し、潜水調査を実施した(図1)。2008年にはアラメ群落(成体;1歳以上)の下限界は固定ラインの28m地点であり(図2)、沖側を中心にウニ類(ほとんどがキタムラサキウニ)が高密度(60.1個体/10m2)で生息していた(図3)。震災4ヶ月後の2011年7月に調査を行なった結果、ウニ類の密度は6.6個体/10m2に激減していた。多くのキタムラサキウニが、強い引き波により深所に運ばれた結果と推察された。その一方で、アラメ幼体の大量発生が確認された。アラメ幼体の一部は成体まで生残し、2013年7月には固定ラインの91m地点までアラメ群落が拡大した。以上の結果から、キタムラサキウニの減少に伴う摂食圧の低下が引き金となってアラメ幼体の大量発生が起こり、群落の拡大につながったと推察された。 |
成果の活用面・留意点 | 活用面: 震災がアラメ群落に与えた影響が明らかになると共に、磯焼けの一要因が再確認され、効果的な群落回復方法(キタムラサキウニの除去等)の提案が可能となる。 留意点: キタムラサキウニの密度が回復しつつあり、摂食圧の上昇による磯焼け再発生の可能性がある。また、地盤沈下等による陸域からの土砂流出等、震災に伴う環境変化についても注視が必要である。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6179&YEAR=2016 |
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