タイトル | 高級養殖二枚貝であるトリガイの成長と摂餌量との関係 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 日本海区水産研究所 |
研究期間 | 2014~2015 |
研究担当者 |
長副聡 竹内宏行 崎山一孝 久田哲二 田中雅幸 和田洋蔵 |
発行年度 | 2016 |
要約 | 2週間の室内飼育試験によってトリガイの成長と摂餌量の関係を詳細に調べた。その結果、トリガイが植物プランクトンを食べた量と成長量との間には、右肩上がりの直線的な関係が確認され、餌が多ければ多いほど、トリガイは成長するという関係が明らかとなった。また、1日当たりに食べる量が、植物プランクトンが含む色素量で100.7 μgを下回ると身が痩せてしまうことが判った。 |
背景・ねらい | トリガイは、京都府の「丹後とりがい」に代表されるような高級二枚貝としてブランド化されている養殖対象種である。この貝は、大型のものほど高値で取引されるため、効率的かつ計画的に成長させることは漁業収益の安定と向上につながる。特に、トリガイの成長に対する餌の情報は、養殖海域の選定、トリガイを吊り下げる水深の選定、養殖用収容容器に入れるトリガイの個体数などを決定するための重要な基礎情報となる。このような基礎情報を室内試験によって詳細に調べた研究は他の二枚貝でもほとんどないため、トリガイを用いて2週間の室内飼育試験を行った。 |
成果の内容・特徴 | 飼育試験は図1に示す装置を用いて行った。500 L水槽を満たした海水に培養した植物プランクトンを添加し、その海水を水中ポンプによりトリガイを収容した500 ml容器に掛け流して2週間飼育した。水槽の調整海水は、植物プランクトンの色素量をもとに0 μg/ L、2 μg/ L、5 μg/ L、10 μg/ Lおよび20 μg/ Lの5段階に分けて、トリガイに食べさせる餌の量に差をつけた。それぞれ毎朝1回、新規の調整海水に入れ替えた。なお、トリガイは500 mlの容器に1個体ずつ(平均殻長43.7±2.9 mm)収容した。 試験の結果、トリガイが植物プランクトンを食べた量と成長量との間には、右肩上がりの直線的な関係が確認された(図2)。つまり、餌が多ければ多いほど、トリガイは成長するという関係であった。また、トリガイは、1日当たり植物プランクトンの色素量で100.7 μg以上を食べないと身が痩せてしまうことが判った。 |
成果の活用面・留意点 | 今回の成果は、養殖海域の選定、トリガイを吊り下げる水深の選定、養殖用収容容器に入れるトリガイの個体数などを決定するための重要な基礎情報として活用できる。ただし、今回の成果は、トリガイが支障なく植物プランクトンを食べることのできる濃度の範囲で行われている。そのため、殻長が約40 mmのトリガイでは、海水中の植物プランクトンの量が15 μg/ Lまでは今回のトリガイの成長と摂餌量との関係を適用できるが、赤潮状態のような濃密な海水(30 μg/ L以上)になると上記の関係は適用できないと考えられる。また、殻長が40 mmより小さいトリガイでは、支障のない海水中の餌濃度が15 μg/ Lよりも低い濃度になる可能性があるので、注意する必要がある。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6127&YEAR=2016 |
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