日本海で漁獲されたクロマグロの安定同位体比による渡洋回遊履歴の解明

タイトル 日本海で漁獲されたクロマグロの安定同位体比による渡洋回遊履歴の解明
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 国際水産資源研究所
研究期間 2016~2020
研究担当者 田和篤史
大下誠二
発行年度 2016
要約 日本海で漁獲されたクロマグロを用いて、東太平洋からの再渡洋の実態を安定同位体比により明らかにした。日本海では3歳魚から西太平洋で過ごしたと思われる個体(低い窒素同位体比)と東太平洋で過ごしたと思われる個体(高い窒素同位体比)が観察された。この現象は日本海において渡洋回遊をした個体が特定可能なことを意味する。
背景・ねらい 太平洋クロマグロの資源状況や生態は漁業者のみならず一般的に高い関心を持たれている。本種は日本周辺(南西諸島海域・日本海海域)で産卵し、概ね1歳魚くらいまでは日本周辺で成長をする。一部の個体は東太平洋に渡洋し、数年を過ごして西太平洋へ再渡洋することがわかっている。しかしながら、その渡洋-再渡洋の実態は未だ詳細にわかっていない。したがって、安定同位体比を用いて解明をすることとした。 
成果の内容・特徴 東太平洋の湧昇域では脱窒によって高い値の窒素安定同位体比を持つ窒素が表層近くに分布するため、生態系地位が同じであっても西太平洋に比べて高い窒素安定同位体比を持つことが知られている。太平洋クロマグロは一部が西太平洋から東太平洋に渡洋し、東太平洋の沿岸域で過ごした個体は高い窒素安定同位体比の値を持つことが知られている。これらの個体が西太平洋に再渡洋した場合、もともと西太平洋にいた群とは異なる群として検出が可能である。日本海では2歳魚以上で漁獲がなされており、これらの仮説を検証するのに適した海域であった(図1)。本研究により、3歳から5歳までの魚で東太平洋から渡洋してきたと判断される群が観察された(図2)。また餌生物の炭素・窒素安定同位体比も東西太平洋で明らかに異なり、クロマグロが東西太平洋を渡洋-再渡洋している様子がうかがえた(図3)。この技術を用いることにより、渡洋-再渡洋の実態解明が進むことが期待される。 
成果の活用面・留意点 本研究では約150個体を用いているが、広域的に分布するクロマグロの回遊様式の特定や定量的な評価にはサンプルサイズを増やす必要がある。しかしながら、電子標識に比べて安価で大量の処理が可能であるため、今後は更に検体数を増やし詳細に解明をしたい。 
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6178&YEAR=2016
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