タイトル | カンパチ眼球炎の細菌学的原因究明 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 増養殖研究所 |
研究期間 | 2015 |
研究担当者 |
湯浅 啓 嶋原佳子 西岡豊弘 三輪 理 |
発行年度 | 2016 |
要約 | 近年、養殖カンパチ幼魚で問題となっている眼球炎の原因究明を行い、Vibrio harveyiが主原因であることを特定し、また高水温で症状が重篤化することを明らかにした。 |
背景・ねらい | 2010年頃から南九州や西四国を中心に、養殖カンパチに眼球炎が発生するようになり、死亡率は高くないが商品価値の低下による産業的な被害が生じている。しかし、炎症部位では形態的に複数の細菌が観察されるものの、眼球炎に罹患したほとんどの個体は魚体の他の部位に顕著な病変を持たず、原因が不明であった。本研究では眼球の病理組織学的な観察を行うとともに、炎症部位から細菌を分離した後、分離株を用いた人為感染試験を実施し、本疾病発症における細菌感染の役割および発生要因としての水温の影響について検証した。 |
成果の内容・特徴 | 1)眼球の異常が比較的軽度なものにおいては,角膜に障害がある場合が多く,重度なものでは炎症部分がしばしば角膜中央部付近に開口していた(図2)。 2)複数の養殖場で採取された程度の異なる眼球炎症状を呈するカンパチ幼魚の眼球内から細菌分離・同定を行った結果、細菌分離の可能であった個体の全てからVibrio harveyiが分離された。 3)眼球炎罹病魚から分離されたV. harveyi、Shewanella haliotis、Pseudomonas sp.の他、一般魚病細菌であるPhotobacterium damselaeおよびLactococcus garvieaeについて、健康カンパチ幼魚の眼球内に注射したところ、V. harveyiおよびShewanella haliotis接種魚において自然感染魚と同様の症状を示した。すなわち自然感染の症状である眼球潰瘍形成、潰瘍の乾酪化および潰瘍の修復(一般に銀眼と呼ばれる症状)(図1)が再現でき、死亡も見られなかった(表1)。 4)1)~3)の結果から、本疾病は核膜に生じた外傷からV. harveyiが感染することによって生じると考えられ、本疾病は眼球へのV. harveyi感染症であると判断された。 5)水温別でのV. harveyiを用いた感染実験では、高水温で症状が重篤化する傾向が認められ(図3)、近年の多発傾向について、温暖化による海水温上昇の影響が示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | 本疾病がV. harveyiを主原因とする細菌感染症であると判明したことから、抗菌剤の投与による効果が期待できると予想できた。また、高水温での症状の重篤化が確認できたことから、飼育水温により発生予測が可能であると考えられた。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6198&YEAR=2016 |
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