タイトル |
放牧方式等を反映した肉用牛繁殖経営の評価モデル構築と経営成果の比較 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究期間 |
2013~2016 |
研究担当者 |
千田雅之
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発行年度 |
2016 |
要約 |
肉用牛繁殖経営の評価モデルを構築し、放牧方式別の経営成果を比較すると、妊娠牛の季節移動放牧による子牛生産のコスト低減効果は、周年舎飼の10%程度にとどまるが、周年親子定置放牧と冬季飼料の外部調達により約40%のコスト低減が図られる。
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キーワード |
肉用牛繁殖経営、線形計画法、季節移動放牧、周年定置放牧、親子放牧
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背景・ねらい |
肉用牛繁殖経営の収益向上、水田や里山の利活用推進の手法として放牧が普及しつつある。しかし、放牧期間や対象とする牛、草地利用方式などにより経営成果は異なるため、担い手確保に必要な収益等の得られる生産管理方式を明らかにする必要がある。 そこで、放牧対象牛や放牧草地の管理及び放牧利用期間、舎飼時の飼料調達など、放牧方式等の相違による子牛生産コストや収益性の評価可能な経営評価モデルを構築し、国産飼料を活用しつつ、低コストかつ収益性の高い肉用牛繁殖経営の展開方向を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 家族経営を前提に、現行の繁殖技術水準、流通飼料価格、水田利活用交付金の下で、放牧方式ごとに所得最大となる、土地利用と繁殖牛頭数、経営成果等の試算可能な肉用牛繁殖経営の評価モデルを、線形計画法を用いて構築する(表1)。
- 放牧方式等は、(1)全頭を周年舎飼飼養【周年舎飼】、(2)繁殖牛のうち妊娠確認から分娩1ヶ月前までの妊娠牛のみを、春から秋の6~9ヶ月間、分散圃場へ移動を繰り返しつつ放牧飼養【妊娠牛の季節移動放牧】、(3)すべての繁殖牛の分娩時を除き、畜舎に隣接する放牧地に周年放牧飼養(冬季は粗飼料持ち込み)【繁殖牛の周年定置放牧】、(4)子牛を含めすべての牛を同様の放牧地に周年放牧飼養【周年親子定置放牧】、に分けられる。(2)については、放牧草地管理及び放牧期間の相違、(4)については、冬季飼料の外部化による効果についても試算し、経営成果を比較する(表2)。
- 【妊娠牛の季節移動放牧】のうち、慣行牧草体系(イタリアンライグラスと栽培ビエ)では、【周年舎飼】と比べて、水田利活用の交付金により所得は増加するが、省力化や規模拡大の効果は10%程度であり、子牛生産コスト低減効果は小さい。永年生牧草や放牧延長体系の導入により、省力化と規模拡大が可能になるが、子牛生産コストの低減はわずかである(表3)。
- 【繁殖牛の周年定置放牧】では、省力化が可能となり規模拡大は図れるがコスト低減効果は小さい。
- 【周年親子定置放牧】では、省力化と規模拡大、所得増加が顕著に表れ、子牛生産コストの大幅な低減が可能になる。また、牧草の自家採草を中止し、コントラクター等から稲WCS等を購入することにより、周年舎飼と比べて約70%の省力化と40%のコスト低減が図られ、家族労働力で約25haの放牧用地を活用して70頭の繁殖牛の飼養が可能となり、子牛価格が30万円に低下しても、約700万円の所得が得られる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 肉用牛繁殖経営の担い手確保に必要な生産体系の普及と、その実現にむけた研究開発や基盤整備等の推進に資する。
- 肉用牛部門を導入している中山間集落営農法人等の同部門の収益性改善等に資する。
- 経営試算は関東以西の冬季降雪の比較的少ない本州地域を想定した結果である。耕作放棄地や里山の草地造成に必要な雑木伐採等の基盤整備費用は試算に含めていない。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2016/warc16_s01.html
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カテゴリ |
イタリアンライグラス
規模拡大
経営管理
コスト
コントラクター
省力化
水田
中山間地域
低コスト
肉牛
繁殖性改善
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