タイトル |
マイクロアレイ解析による着色期ブドウ果皮の光・低温誘導性遺伝子の抽出 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 |
2009~2015 |
研究担当者 |
東暁史
藤井浩
島田武彦
薬師寺博
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発行年度 |
2016 |
要約 |
公開ゲノム配列情報を利用して開発したブドウマイクロアレイを用い、異なる光・温度条件で培養した着色期ブドウ果皮の遺伝子発現パターンを比較すると、光や低温で誘導される果皮フラボノイド蓄積に関与する複数の遺伝子候補を抽出できる。
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キーワード |
遺伝子発現、温度、マイクロアレイ、光、ブドウ
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背景・ねらい |
ブドウ果皮におけるアントシアニンやフラボノール等のフラボノイド系化合物の蓄積量は、果実成熟期の環境要因(光や温度等)の影響を強く受け、光照射や低温によりフラボノイド系化合物の生合成が促進する。しかし、フラボノイド生合成系の制御に関与する光シグナル伝達系や、低温により誘導されるアブシジン酸(ABA)のシグナル伝達系の構成要素は未解明である。そこで、着色期ブドウ果皮における光およびABAのシグナル伝達に関連する候補遺伝子を探索することを目的に、公開ゲノム配列情報を利用したブドウマイクロアレイを開発し、異なる光・温度条件で培養したブドウ「ピオーネ」果粒を用いた網羅的な遺伝子発現解析を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 開発したブドウマイクロアレイは38,549個の遺伝子プローブを搭載し、全プローブの82.9%に遺伝子機能アノテーションを付与している。
- 異なる光・温度条件で培養したブドウ「ピオーネ」の果皮RNAを用いたマイクロアレイ解析を行い、光照射、低温(15°C)、光照射+低温(15°C)のいずれかの条件で発現量が増大する遺伝子を抽出すると、40個の光誘導性遺伝子、55個の低温誘導性遺伝子、34個の光+低温誘導性遺伝子の候補が抽出できる。
- 抽出した遺伝子候補は、既知のフラボノイド生合成酵素遺伝子群に加え、モデル植物において光シグナル伝達やABAシグナル伝達に関連する遺伝子を含む(表1)。また、低温誘導性遺伝子は多くのABAシグナル伝達関連遺伝子を含むことから、ブドウ果皮におけるABAシグナル伝達は温度の影響を強く受ける可能性がある。
- 抽出した光誘導性遺伝子からelongated hypocotyl 5(HY5)を、低温誘導性遺伝子からopen stomata 1(OST1)を、光+低温誘導性遺伝子からenhanced response to ABA 1(ERA1)を遺伝子機能アノテーションやモデル植物での知見を参考に選択し、これらの発現量をリアルタイム定量PCRにより解析すると、マイクロアレイ解析で得られた結果と同様の発現パターンを示す(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 開発したブドウマイクロアレイ情報(GPL19557)はNCBI Gene Expression Omnibusに公開している。
- マイクロアレイ解析で得た網羅的発現量データ(GSE64153)は、NCBI Gene Expression Omnibusから入手でき、着色期ブドウ果皮において光や温度に反応する新規遺伝子候補や、遺伝子ネットワークの更なる探索に有用である。
- 気候変動によるブドウ着色不良の発生機構の解明につながる。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2016/nifts16_s13.html
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カテゴリ |
ぶどう
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