カイコとクワコの交雑第一代での幼虫行動の解析

タイトル カイコとクワコの交雑第一代での幼虫行動の解析
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2016
研究担当者 河本夏雄
発行年度 2016
要約 養蚕農家の周辺でもカイコとクワコの交雑個体が見つからない要因の一つは、クワコに比べて交雑第一代の幼虫は静止している時間が少なく、体を左右に振ったり同じ場所で動きまわることが多く、野外で捕食者に見つかりやすいことにあると考えられる。
キーワード 遺伝子組換えカイコ、第一種使用等、生物多様性影響評価、行動
背景・ねらい 養蚕農家で遺伝子組換えカイコを第一種使用等として飼育するためには、生物多様性への影響のおそれがないことを示して大臣承認を得る必要がある。日本国内にはカイコと交雑可能な近縁野生種としてクワコが生息しているが、養蚕農家の周辺など日本各地でクワコを採集して調査した結果、交雑個体は見つかっていない。その要因としては、養蚕農家では繭(蛹)までしか飼育しないことや、野外に出たカイコがすぐに捕食されるなどしてクワコと交尾する機会が少ないことなどがあるが、そのほかに、交雑個体が生じても捕食されやすい可能性が考えられることから、幼虫の行動を解析する。
成果の内容・特徴
  1. 幼虫行動の記録は、ボール紙上の半径18.5 cmの円形の枠の中心に終齢幼虫を置いてビデオカメラでのタイムラプス撮影することにより行う。1時間後の位置はボール紙上に書き込んで中心からの距離を計測する。実験材料としてはカイコ、クワコ、カイコ×クワコの交雑第一代を用い、行動記録開始まで人工飼料を与えて飼育し、行動記録中は飼料を与えない。
  2. 開始から1時間後の位置の記録では、クワコは約4割が枠外に出た一方、残りのほとんどは2 cm以内にとどまっている(図1)。ビデオでの記録から、まったく動いていないものも約2割認められる。交雑第一代で枠外に出たのは約1割、2 cm以上動いたものが約4割認められる。カイコは4 cm以内に約9割が残っており、枠外に出たものは認められない。
  3. 7時間の記録を解析したところ、半数が枠外に出るまでの時間はクワコで2.5時間、交雑第一代で3.5時間であり、カイコは9割以上が枠内にとどまっている(図2)。
  4. 7時間の撮影記録をもとに、1分ごとの行動を解析したところ、クワコは体の前半部を左右に振ったり方向転換したりする動きを始めてから枠外に出るまで1時間程度であったのに対し、交雑第一代では3時間程度を要したことがわかる(図3)。カイコは常に体を振ったり方向転換をしていたが、枠外に出るような直線的な動きは少ない。
  5. クワコ幼虫は日中は桑樹上で静止して枝に擬態していることが知られている。本研究の結果で、交雑第一代の幼虫はクワコに比べて移動を伴わずに体の前半を左右に振ったり方向を変えたりする行動が多く見られたことから、クワコ幼虫に比べて野外で捕食される可能性が高いことが考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 養蚕農家で遺伝子組換えカイコを飼育するためには、カルタヘナ法に基づく第一種使用規程の承認を系統ごとに受ける必要がある。カイコとクワコの交雑個体が養蚕農家で生じる可能性は元来極めて低いが、本研究において交雑第一代の幼虫の行動パターンを解析した結果から、仮に遺伝子組換えカイコとクワコの交雑個体が野外で生じても、クワコよりも捕食されやすいと考えられることから、第一種使用規程承認申請での生物多様性影響評価への活用が期待される。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2016/nias16_s14.html
カテゴリ カイコ

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