スギ花粉症対策に向けた新技術 -菌類を活用して花粉の飛散を抑える-

タイトル スギ花粉症対策に向けた新技術 -菌類を活用して花粉の飛散を抑える-
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 窪野 高徳
服部 力
秋庭 満輝
高橋 由紀子
山田 晋也
斎藤 真己
本間 正敏
鈴木 繁
発行年度 2017
要約 スギ花粉の飛散を防止するため、菌類を活用した即効性のスギ花粉飛散防止剤の製剤化に成功しました。さらに、施用法として、人力による地上散布法及び無人ヘリコプターによる空中散布法を開発しました。
背景・ねらい スギ花粉発生源の新たな対策として、スギの雄花だけを枯らす菌類 Sydowia japonica(シドウィア菌)を用いて、短期間で80%以上の雄花を枯死させる胞子懸濁液を開発しました。また、胞子懸濁液を凍結乾燥することで粉末化し、実際に散布可能な防止剤として製剤化することに成功しました。さらに、実用的かつ効率的な散布施用法として、人力による地上散布法や無人ヘリコプターによる空中散布法を開発し、菌類を用いて人為的にスギ花粉の飛散を抑止できることを明らかにしました。
成果の内容・特徴 菌類を用いたスギ花粉飛散防止対策
私たちは、スギの雄花だけに寄生するシドウィア菌を自然界で発見し、この胞子を用いて、短期間で雄花を枯死させる(図1)ことによって、花粉の飛散を抑える防止液(胞子107個/cc + 5%大豆油 + 1.6%レシチン)を開発しました。そこで、この防止液を活用したスギ花粉飛散防止法の実用化を目指して「防止液の製剤化」及び「実用的な散布施用技術の開発」に取り組みました。

防止液の製剤化
シドウィア菌の胞子を人工的に散布するには、胞子を大量に作るシステムが必要です。ツァペックドクス培地を用いることで、約2,000~2,500 億個/Lの大量培養に成功しました(図2,3)。さらに、培養したシドウィア菌の胞子を凍結乾燥することで、胞子の活性を失うことなく粉末化することに 成功しました(図4)。これにより、胞子の常温または冷蔵の保存が可能になり、防止液の製剤化に目処が立ちました。

防止液の花粉飛散抑制効果
防止液を散布した枝と散布しない枝の花粉飛散量を「袋がけ法」によって比較しました。防止液を11月に散布すると90%以上の雄花が枯死することにより、散布しないスギに比較して花粉飛散量を3%程度まで、12月に散布した場合は17%程度まで抑制することができました(図5)。

人力による地上散布法
公園や社寺林等の小規模植栽地のスギを想定して地上散布法を検討しました。1枝あたり雄花序が10 ~ 100本形成されたスギ壮齢林で、噴霧器を使って防止液を「50cc / 枝」散布した区では、80%程度の雄花序の枯死率が得られました(表1)。

無人ヘリコプターによる空中散布法
無人ヘリコプターを用いることで、高い位置にある雄花への散布(図6)や短時間の散布を可能にするため、従来の農薬散布用無人ヘリで用いられてきたノズルの仕様を改良し、スギ林に効果的に散布する飛行法を検討しました。この結果、スギ林縁部に対して、高さ5m、幅5 mの範囲に防止液6Lを散布した結果、80%以上の雄花を枯死させることに成功しました(表2)。

今後の課題
この研究では、スギ花粉の飛散防止液を製剤化するとともに、無人ヘリによる空中散布施用が可能であることを明らかにしました。実用化のためには、薬効を最大限に発揮する散布量の決定や微生物農薬として登録する試験など、まだまだ研究開発すべき課題が残されています。私たち は、今後も、これらの課題を解決してスギ花粉飛散防止液の実用化につなげる技術開発に取り組んでいきます。

研究資金と課題
本研究は、農林水産業・食品産業科学研究推進事業「菌類を活用したスギ花粉飛散防止液の高度化と実用的な施用技術の開発」(課題番号26075C)による成果です。
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p18-19.pdf
カテゴリ 病害虫 乾燥 施用技術 大豆 農薬

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