タイトル | トドマツ人工林の造林適地をマップ化する |
---|---|
担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
津山 幾太郎 石橋 聡 |
発行年度 | 2017 |
要約 | トドマツ人工林の造林に適した、気候や地質、地形などの環境条件を明らかにするとともに、北海道における造林適地の分布を推定しました。 |
背景・ねらい | 北海道のトドマツ人工林は、その多くが主伐期を迎えており、伐採後の再造林における最適な管理手法を特定することが重要な課題となっています。そこで、トドマツ人工林の造林に適した環境条件と、その分布を地理的に明らかにすることを目的に研究を行いました。その結果、広域なスケールでは、温暖かつ夏期降水量が多く、火山灰地や花崗岩地といった特定の地質以外の場所が、トドマツの造林適地であることが分かりました。また、詳細なスケールでは、北東斜面が特に好適な一方、過湿な場所は不適なことが分かりました。地理的には、十勝や渡島・檜山の低地などが好適な一方、高標高域や、宗谷や根室などは不適なことが示唆されました。 |
成果の内容・特徴 | 林業樹種としてのトドマツ トドマツは、北海道に自生するマツ科モミ属の針葉樹で、北海道における主要な造林樹種です(図1)。現在、トドマツ人工林の多くが30~50年生に集中しており、主伐対象となる林分の面積が急速に拡大しつつあります。 トドマツは、寿命が比較的短く、材質の劣化が早いうえ、施業時の傷などによる材腐朽が入りやすいことから、伐期を迎えた林分の速やかな主伐とその後の再造林が喫緊の課題です。主伐後の適切な再造林を検討する上で、トドマツの成長がどのような環境条件で良いのか、それが地理的にどのように分布しているのか、を明らかにする必要があります。 どのような条件が好適なのか? そこで私たちは、国有林と民有林のトドマツ人工林に関する1,442地点のデータと、各地点における気温や降水量などの気候データや地質・土壌データ、地形データといった環境要因に関するデータを用いて、回帰樹モデルと呼ばれる統計モデルを構築し、トドマツ人工林の造林適地となる環境条件を明らかにしました。トドマツにとっての好適さの指標には、成長の良さを示す地位指数 を再区分した値を用いました。その結果、気候や地質・ 土壌的には、温暖で、夏期降水量が多く(図 2)、火山灰地や花崗岩地、結晶片岩地以外の場所が好適であることが分かりました。また、地形的には、北東斜面が特に好適であることが明らかになりました。これは、これまで林業関係者の間で経験的に言われてきたことと合致する結果です。一方で、低温かつ乾燥した地域や、地形的に 水が集まりやすく過湿になりやすい場所は、不適なことが示唆されました。 どこが好適なのか? 次に、先ほどのデータと、ランダムフォレストという、回帰樹モデルの発展型で、より高精度な分布予測が可能な統計モデル(モデルの当てはまりの良さを示す決定係数は0.89)を用いて、北海道におけるトドマツ人工林の造林適地を予測しました(図 3)。その結果、十勝南部、渡島・檜山の低地、日高西部や留萌の低地などが、適地と予測されました。一方、道内の高標高域や、宗谷、根室、胆振の一部などは、低温と乾燥、あるいは火山灰地であることにより、不適地であることが示唆されました。 主伐後の施業法選択への応用 本研究で明らかにした、トドマツ人工林の造林適地の条件と地理的な分布は、トドマツ人工林主伐後の次代林分の施業方法を選択するための基盤情報となります。さらに、主伐費や育林費などの情報を加味することで、経営的指針を提示することができ、より現実的な次代林分の施業方法の提案ができます。 研究資金と課題 本研究で明らかにした、トドマツ人工林の造林適地の条件と地理的な分布は、トドマツ人工林主伐後の次代林分の施業方法を選択するための基盤情報となります。さらに、主伐費や育林費などの情報を加味することで、経営的指針を提示することができ、より現実的な次代林分の施業方法の提案ができます。 |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p20-21.pdf |
カテゴリ | 乾燥 経営管理 |