タイトル | 大径材生産に向けた造材機械の作業限界の解明 |
---|---|
担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
山口 浩和 伊藤 崇之 有水 賢吾 猪俣 雄太 毛綱 昌弘 鈴木 秀典 中澤 昌彦 山口 智 宗岡 寛子 佐々木 達也 吉田 智佳史 田中 良明 上村 巧 陣川 雅樹 図子 光太郎 相浦 英春 |
発行年度 | 2017 |
要約 | 現在一般に普及しているサイズの造材機械について、作業時の安定性および作業能力を計測し、大径木を処理する際の作業限界をシミュレーションにより明らかにしました。 |
背景・ねらい | 人工林が成熟し大径化すると、従来の林業機械では対応できなくなります。そこで本研究では、今後の機械導入に向けたデータを得るため、現在一般に普及している造材機械が、安全かつ能率的に大径材を生産するための作業限界を明らかにしました。作業限界は、機体の重心計測から求めた安定性、機械の諸元から計算される作業能力、さらには造材作業の観測から推定した機械に作用する外力により決定されます。これらの関係をシミュレートし、処理する伐倒木の大きさに応じた最大作業半径を求めることができるようになりました。このシミュレーションは、安全作業のための機械設計や作業指針の作成等に役立ちます。 |
成果の内容・特徴 | 大径木生産に対応する造材機械の課題 ハーベスタやプロセッサ等の造材機械は、集材された 伐倒木を枝払いし、一定の長さに切って丸太にする工程を1台で行う林業機械です。日本国内では、油圧ショベルをベースマシンとして、バケットの代わりに専用の作業機を取り付けて作業を行うことが一般的です(図1に示す機械)。これまで間伐作業が中心であったため、造材機械で処理する対象は比較的細い木でした。しかし人工林が成熟し、今後は大径木が収穫の対象となることから、機械の安定性や能力面で、これに対応できる造材機械の諸元を明らかにする必要があります。そこで本研究では、従来サイズの機械が、安全かつ能率的に大径材を生産するための作業限界を明らかにしました。 外力と最大作業半径のシミュレーション 機械の作業限界は、外力によって機械が転倒しないで作業が行える最大作業半径(安定限界)と、機械自身の能力によって仕事を行うことができる最大作業半径(能力限界)のうち、より小さい方となります(図1)。まず、機械の重心計測を行い、機械の進行方向に対して前後方向、横方向それぞれについて、最大吊上げ荷重と安定限界の関係を明らかにしました。次に、作業機や大径木を吊上げる動作を行う油圧シリンダの力から最大吊上げ荷重と能力限界の関係を明らかにしました。これらの結果から、機械に加わる外力と最大作業半径との関係をシミュレーションしました。 作業時に機械に作用する外力の推定 実際の作業にシミュレーションを適用するためには、機械に作用する外力を求める必要があります。しかし、機械に外力を計測するための装置を取り付けることは困難です。そこで、胸高直径と質量が分かっている伐倒木を用いて、作業中の造材機械と伐倒木の動きを3次元動作解析することにより、機械に作用する外力および慣性力を推定しました(図2)。 大径木の大きさに応じた作業範囲 本研究により、大径木を処理する作業について、木の大きさや機械の向きに応じた最大作業半径をシミュレーションから求めることができるようになりました(図3)。 作業の方向は、機械の進行方向に対して横方向よりも前後方向の方が倒れにくいことが分かりました。一方、安定性の高い前後方向での作業でも、木が太くなると持ち上がらない場合があることが分かりました。しかし、多くの場合、機械の安定性よりも機械の能力の方が大きいため、作業中に機械が転倒する可能性があることが明らかとなりました。これらのことから、現在普及している機械で安全に作業を行うためには、作業限界を知らせる警報装置や安定性を高めるためのアウトリガ(横に張り出す足)などによる改良が必要になることが分かりました。 研究資金と課題 本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト「大径・長尺材に対応した新たな生産技術の開発」による成果です。 |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p22-23.pdf |
カテゴリ |