歴史から展望する木材産業のこれから

タイトル 歴史から展望する木材産業のこれから
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 嶋瀬 拓也
発行年度 2017
要約 国内木材産業とその国産材回帰の動きについて今後の見通しを得るため、製材業・合板工業の歴史を振り返りました。浮かび上がってきたのは、利用する原木から最大の価値を引き出すべく競い合ってきた企業や産地の姿でした。
背景・ねらい 国内木材産業とその国産材回帰の動きについて今後の見通しを得るため、製材業・合板工業の歴史を振り返りました。1960年代、木材輸入が本格化し、多様な原木が入手可能になると、各企業は、それらの原木を使って様々な製品を作り始めました。しかし、その後しだいに、原木ごとの特性を生かせる製品に特化して競争力を高めた企業や産地だけが存続し、発展するようになりました。2000年代以降、原木の輸入が難しくなり、国産材への切り替えが進んでいますが、原木の特性を生かすことが企業や産地の存続・発展に直結してきた歴史を踏まえると、以前よりも狭まった原木の選択肢の中から、原木と製品の新たなマッチングを探るような形で産業の再編が進むことが予想されます。
成果の内容・特徴 国産材への回帰が進んでいる
国内木材産業には、2000年頃から、国産材へと回帰する動きが鮮明になっています。2000年から2015年にかけて、林産工場が入荷した原木に占める国産材の比率は、製材用が48.2%から74.2%に、合板用が2.6%から79.6% に高まりました。これは、国内人工林資源の成熟が進んだ一方で、ロシアの丸太輸出税引き上げ(2006年~)や中国の木材需要の高まりなどにより輸入材の調達が難しくなってきたためです。この動きの今後を見通すためには、かつて、なぜ国内木材産業が輸入材へと向かったのか、輸入材をどのように使ってきたかを詳しく知る必要があります。そこで、輸入材の利用が急増した1960年代初めから今日までの国内製材業・合板工業の歴史を、その原木利用の変化に留意しつつ振り返りました。

輸入材は単に量の不足を補っただけではなかった
木材輸入が本格化した1960年代、製材各社は、世界各地から集まる多様な原木の中から、より有利な条件で安定的に調達できそうな原産地・樹種・サイズの原木をそれぞれに選び、様々な製品を作り始めました。しかしその後、原木ごとの特性に合った製品を生産する企業がより多く存続し、発展していき、原木の樹種に対応する形で製材業の分化が進みました(図1、表1)。これは、市 場競争の結果と考えられます。さらに、生産品目を同じくする企業や産地の間でも競争が生じ、利用樹種・生産 品目ごとに少数(全国に数か所)の主産地が形成されました(図2)。合板工業では、利用原木と生産品目の関係はさらに鮮明です。1990年代半ばから進んだ南洋材(熱帯産広葉樹) から北洋材(針葉樹)への原料転換の際は、かつての主力であったコンクリート型枠用や内装用から、住宅の床や壁として使われる構造用への切り替えが急速に進みました(図3)。針葉樹材では材質的に対応が難しかった型枠用や内装用の分野を手放す一方、針葉樹材の加工・利用技術向上によって構造用の分野での競争力を身に付け、短期間のうちに輸入製品との新たな棲み分け構造を確立しました(図4)。

国産材の一層の有効利用に向けて
以上にみたとおり、製材業・合板工業とも、市場競争を通じて、原木の特性を生かした製品への特化が進みました。競争の力は、国産材回帰が進む中でも当然に働き ます。すなわち、輸入材の入手が難しくなり、以前より狭まった選択肢のもと、原木と製品の新たなマッチングを探るような形で産業の再編が進むことが予想されます。 マッチングがうまくいかなければ、輸入木材製品や、木材以外の製品に置き換わっていくこともありえます。このように、歴史を振り返ることで、展望と課題がよりはっきりとみえてきました。輸入材の縮小によって市場に生じたスペースを国産材がよりスムーズに埋めていけるよう、また、国産材の特性を生かせる新たな用途が見出されるよう、研究や行政には、技術や製品の開発、原木安定供給体制の構築などの面でのサポートが求められます。
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p24-25.pdf
カテゴリ 加工 輸出

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