タイトル | 木質バイオマス資源作物としてのヤナギ栽培の実用化 |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
韓 慶民 宇都木 玄 原山 尚徳 上村 章 北尾 光俊 |
発行年度 | 2017 |
要約 | 木質バイオマス資源作物として注目されるヤナギの収穫量は、農業用マルチ設置と除草を実施することで、寒冷地の北海道において目標値10トン/ha/年を達成し、栽培の実用化のための一つのハードルを超えました。 |
背景・ねらい | 地球温暖化等環境問題の解決に向けて、バイオマスエネルギーの利用が注目されています。木質バイオマス資源植物として、諸外国ではヤナギの利用が進んでいます。日本でヤナギを実用化するためには、生産コストの低減と収量の増大などが急務になっており、とりわけ雑草駆除がその鍵を握っています。寒冷な北海道下川町において、農業用マルチを設置するとともに、マルチとマルチとの間の除草を行うことで、 年間のバイオマス収量が約10トン/ha/年に達しました。さらにヤナギの穂の挿し付け深を調整することで、生産量が増大することも分かりました。この成果で、ヤナギの栽培技術の実用化に一歩近づきました。 |
成果の内容・特徴 | 持続的な木質バイオマス資源 地球温暖化や資源の枯渇、生態系の劣化など環境問題の解決のために、化石燃料を代替するバイオマスエネルギーの有効利用が注目されています。そのための木質バイオマス資源作物としては、ポプラ、ドロノキ、ヤナギ、アカシア、ユーカリなどの樹木の利用について研究が進められ、その潜在的な生産能力に期待がよせられています。さらに2012年7月に制定された固定価格買取制度(FIT)が起爆剤となり、広く木質資源の需要が一気に高まっています。 雑草駆除の低コスト化がヤナギ栽培実用化の鍵 森林総合研究所と北海道下川町は、萌芽再生が容易で初期成長が旺盛なヤナギに着目し、未利用地等を活用したヤナギ畑の作出研究を、2007年から共同で開始しました。この研究では、寒冷地で可能なヤナギの乾物収穫量 (ヤナギ収量)の目標値を10トン/ha/年と設定しました。 この中で、優良クローンとしてエゾノキヌヤナギとオノエヤナギを選抜し、挿し穂作りから収穫までの栽培シス テムを確立しました。しかし、生産コストが高く、実用化には至っていませんでした。 最大の課題は、雑草との競合によりヤナギ収量が大きく低下することでした。さらに海外の事例からは、挿し 穂を挿し付ける深さもヤナギの収量に大きな影響を及ぼすことが分かりました。そこで、農業用マルチを用いて雑草を抑制、駆除する方法でヤナギ収量の増大を試みるとともに、適切な挿し付け深を明らかにする試験を行いました。 農業用マルチの設置及び除草によって生産目標を達成 この試験では、耕耘した未利用地にエゾノキヌヤナギとオノエヤナギの挿し穂を植えて、農業用マルチの設置の有無、マルチ設置区ではマルチ間の除草の有無、という三つの処理区を設け、3年後に収穫量を評価しました(図1)。3年後に収穫したヤナギの乾物収量を比較したところ、マルチの無い対照区では挿し穂の活着率が低く、収量は0.46トン/ha/年でした(図2)。マルチの設置区 では、挿し穂の活着率は高くなりました。しかし、雑草を除去しないとマルチとマルチの間に雑草が茂り(図3)、水分や栄養を奪い合う影響もあり、ヤナギの収量は6.9 トン/ha/年にとどまりました。一方、マルチ間を除草した区では、さらに収量は増大し、生産目標である10トン/ha/年を超えました。 挿しつけの深さがヤナギ初期生産に及ぼす影響 挿しつけには、これまで20cmの挿し穂を植えることが推奨されています。そこで土壌に18㎝ほど深挿した穂と、10㎝の浅挿した穂を比較したところ、前者の方が初期生産量は後者より40%高いことが分かりました(図4)。この原因には、深挿しすると、穂の大部分が土壌と密接して乾燥しにくいことや、土壌水分が多い深層に根系を分布できたことが考えられます。本研究の成果は、ヤナギの栽培技術の実用化につながるもので、今後の木質バイオマスの生産拡大と安定供給の推進に貢献します。 |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p26-27.pdf |
カテゴリ | 病害虫 乾燥 コスト 栽培技術 雑草 除草 生産拡大 低コスト バイオマスエネルギー |