平成28年(2016年)熊本地震では中規模木造建物に大きな被害は出ていなかった

タイトル 平成28年(2016年)熊本地震では中規模木造建物に大きな被害は出ていなかった
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 新藤 健太
軽部 正彦
野田 康信
大村 和香子
神原 広平
荒木 博章
平田 晃久
三井 幸成
池田 元吉
発行年度 2017
要約 平成28年(2016年)熊本地震発生後の現地調査の結果、現在の建築基準法で構造設計された中規模木造建物には、大きな被害は発生していないことが分かりました。
背景・ねらい 平成28(2016)年4月に発生した熊本地震では、熊本県益城町で地震観測史上初めて震度7が続けて2回記録されるなど、広い地域で木造建物等に大きな被害が発生しました。森林総合研究所では、震度7を観測した益城町や西原村のほか、熊本市や周辺地域の木造建物の被害状況について調査を行いました。その結果、昭和56(1981)年に強化された建築基準法の耐震基準を満たしていない木造住宅等に大きな被害が発生していた一方、新しい耐震基準を満足するように構造設計された中規模木造建物では、大きな被害は発生していないことが分かりました。
成果の内容・特徴 調査した建物位置と概略
森林総合研究所では、震度7を観測した益城町や西原村のほか、熊本市や周辺地域の木造建物の被害状況について調査を行いました。調査した各建物の概要を表1に、建物の地理的な位置を図1に示します。調査は、昭和56(1981)年以降の新しい耐震基準によって構造設計された中規模木造建物を対象に、延べ15物件の被害調査を行いました。このうち図1のA ~ Cの公共建物について、ここでは取り上げます。

中規模建物の被害と補修の状況
Aは熊本市東区(最大震度6強)の学校体育館です。1989年建設(築27年)の鉄筋コンクリート造2階建ての建物で、屋根だけが木造で、スギ製材を重ねてボルトで一体化させたはりが使われています。図2(右下)のように、壁の頂部で木造の屋根を留めつけている部分のボルトが変形して、周囲のモルタルも割れていました。熊本 地震発生約半年後(以下「半年後」)には割れたモルタルを再充填して、補修が完了していました。
Bは西原村(最大震度7)の社会教育施設です。2010年建設(築5年)のスギ大断面集成材による木造2階建ての建物です。震度7を記録した地域であったにも関わらず、図3のように、建物を構成する木材にほとんど損傷は認められませんでした。建物形状が箱形の総2階建てで、強度のバランスがよく、ねじれにくい構造であったことが幸いしたものと考えられます。設備面では建物のすぐ脇に埋められていた浄化槽が、被害を受けたためトイレが使用できなかったほか、図3(左下)のようにガラス製の防煙垂れ壁が落下したとのことでした。
Cは熊本市南区(最大震度6弱)の図書館および児童館です。2013年建設(築2年)のスギ大断面集成材による木造平屋建ての建物です。この建物も木材には目立った被害が確認されなかったものの、図4のように柱・はりに囲まれた壁の内・外装材が脱落していました。半年後には建物の補修は完了していました。

安全で安心な建物を増やす
建物や街並みに大きな被害が発生してしまった今回の熊本地震ですが、現在の耐震基準によって構造設計し、かつ適切に施工された中規模木造建物なら、震度7の地震に耐える安全な建物であることが明らかになりました。 一方で昭和56(1981)年に強化された建築基準法の耐震基準を満たしていない木造住宅等には課題があることが分かりました。
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2017/documents/p30-31.pdf
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