オイルパーム樹液のpH調整で乳酸発酵が改善する

タイトル オイルパーム樹液のpH調整で乳酸発酵が改善する
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2020
研究担当者 荒井 隆益
小杉 昭彦
Balakrishnan Kunasundari
Kumar Sudesh
発行年度 2017
要約 オイルパーム幹から得られる樹液は、糖分が高く微生物にとって極めて有望な天然培地となるが、乳酸発酵において発酵能低下が認められる。樹液を弱アルカリ性に調整することで、不溶性沈殿を形成・除去できるとともに、微生物生育阻害をもたらす芳香族化合物が減少するため、樹液成分が改質され発酵阻害を防ぐことができる。
キーワード オイルパーム幹, 樹液, 乳酸, 乳酸発酵
背景・ねらい オイルパーム幹から得られる樹液は、遊離糖をはじめ、アミノ酸やミネラルが多く含まれる天然由来の有望な微生物培地となる。これまでに、酵母菌など発酵生産試験で、その有用性を示してきたが、かねてから乳酸発酵に発酵能低下や遅滞が認められていた。乳酸発酵は飲料用途や有機酸生産において重要であるだけでなく、発酵生産における培地の適合性評価の指標となることから、樹液の汎用利用を目指すためにも改質方法を開発する必要がある。そこで、樹液pHを調整する簡便な方法で、共存する発酵阻害物を除去し、乳酸発酵能を回復させる樹液の改質方法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. オイルパーム幹から得られた樹液に乳酸菌(有胞子性乳酸菌 Bacillus coagulans)を接種した場合、乳酸発酵は行われるものの、樹液中の糖以外の成分が乳酸発酵を阻害し、糖からの変換効率は、理論収率の約半分(54 %)となる(表1)。
  2. 樹液のpHを段階的に上昇させると、弱アルカリ側pHにおいて直ちに不溶性沈殿物が形成される(図1)。この不溶性沈殿物を除去し、再び中性pH付近に戻した樹液を用いて乳酸発酵を行うと、乳酸発酵能が回復する。特に弱アルカリ性のpH 9.0に調整した樹液は、乳酸の生産量、変換率、生産性が無処理と比べ1.5~3倍向上する(表1)。
  3. 発酵阻害の原因の一つとして、植物原料特有の芳香族化合物による微生物生育阻害が考えられる。pH調整前後の樹液中の芳香族化合物について、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により同定定量を行うと、pH調整後の樹液では、芳香族化合物であるp-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、シリンジ酸、p-クマル酸、フェラル酸などの含有量が大きく減少している(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)や活性炭(ヤシ殻製)で処理した場合にも、同じように発酵能回復の効果が認められるが、pH調整処理の方が低コストで操作性にも優れている。
  2. 不溶性沈殿には芳香族化合物の他、ミネラルも数%含まれるため、肥料等へ有効利用することが可能である。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_c02
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_c02
カテゴリ 肥料 低コスト

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